障害者の読書支えるマルチメディア技術の最新動向を紹介--東京でDAISYセミナー

登壇した日本DAISYコンソーシアム運営委員長の河村宏さん=東京都千代田区で2019年7月19日、二瓶朋子撮影

 活字書籍の利用が難しい障害者の読書にも対応する電子書籍の国際規格であるDAISY(デイジー)の最新動向を紹介するセミナー「誰もが読める! アクセシブルな電子書籍のニーズと最新情報」が19日、東京都千代田区で開かれた。

     セミナーは日本DAISYコンソーシアム(JDC)が主催したもので、日本電子出版協会(JEPA)加盟の出版社や読書バリアフリーに関わる福祉関係者ら100人以上が参加した。活字のハイライト表示と音声が同期するマルチメディアDAISYや、アクセシビリティーにも配慮された最新の電子書籍フォーマットEPUB3(イーパブスリー)などについてアクセシビリティー分野の第一人者が解説し、参加者は熱心に聴き入った。

     セミナーでは1995年に視覚障害者のためのデジタル録音図書として世界標準のDAISY規格を提唱したJDC運営委員長の河村宏さんが、2013年に世界知的所有権機関(WIPO)が採択したマラケシュ条約について説明した。視覚障害者ら活字書籍を読むのが難しい「プリントディスアビリティー(読字障害)」のある人たちが、代替手段として録音図書や点字図書を製作できる著作権の権利制限規定を認める画期的な条約であり、日本や欧州連合(EU)が今年批准しており、米国もまもなく批准予定であることも紹介した。

     また同条約成立の背景として、06年に国連が定めた障害者権利条約、16年に成立した日本の障害者差別解消法があり、今年6月にはマラケシュ条約の日本版とも言える「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」が国会において可決、成立したことを挙げた。

     電子書籍の標準化に取り組む国際電子出版フォーラム(IDPF)が、無償公開している電子書籍のファイル形式であるEPUB(イーパブ)のアクセシビリティーについて、慶応義塾大学特任教授で、Advanced Publishing Laboratoryアクセシビリティワーキンググループリーダーでもある村田真さんが紹介。最新版であるEPUB3の特徴は、スマートフォンやタブレットPCなど閲覧環境に合わせて表示型式を端末側で自由に調整できるリフロー型式で、縦書きやルビを含む日本語組み版にも対応すること、世界のデイジーコンソーシアムが中心的な開発を支えており、障害者の読みやすさにも配慮されていること、EPUBのアクセシビリティーをチェックできる「Ace」や「SMART(Simple Manual Accessibility Reporting Tool)」などのツールが提供されていることを紹介した。

     村田さんは日本語のアクセシビリティー要件として、「天の川」などの単語が行分割されない分かち書きの標準化を挙げた。

     セミナーではこの他、インクルーシブ教育として地域の小中学校で健常児と一緒に障害児が学ぶ際、デイジー教科書が発達障害児ら1万人を超える児童に利用されていることや、全国視覚障害者情報提供施設協会が点訳図書やデイジー録音図書を公開している電子図書館サービスであるサピエ図書館の活動などが紹介された。【岩下恭士】