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ユニバ・トーク

8月27日 デザイン思考はユニバーサル

 8月3日から2日間、東京都港区のグーグル東京オフィスで開かれた「レポーティング 2020 アンド ビヨンド:アイデアソン」というメディア向けのイベントに参加した。テーマは「報道機関の枠を超えて、新しいスポーツ報道のかたちを考える」。報道機関との連携を推進するグーグルニュースラボが主催した。参加者がチームを組んでアイデアを出し合うアイデアソン・ハッカソンは数年前、触覚技術の開発を競うイベントに参加しようとしたら、主催者から「視覚障害者は十分フォローできないので、自宅からオンラインで参加してはいかがですか」と遠回しに断られた経験がある。今回は違った。主催者から「新聞記者でありながら、障害当事者でもある岩下さんだからお声をかけました」と言われて、その場でエントリーした。

     アイデアソンにはNHK、朝日、日経、沖縄タイムスなど同業他社の記者やデザイナーら約60人が参加、10グループに分かれてデザイン思考に基づくグループワークに取り組んだ。基本的に非公開イベントなので詳細はご紹介できないが、組織を超えたチームワークは新鮮でおもしろかった。

     デザイン思考はグーグルがイノベーション(技術革新)に求められる創造的思考を鍛える手法として利用しているもので、グーグルやアップルが大きな課題の有効な解決手段として採用しているという。

     チームワークではまず、各自の課題の洗い出しということで、私からは「障害を克服してひたむきにトレーニングに励むパラ選手」みたいなステレオタイプのサクセスストーリーの脱却や、そもそも「バリアーゼロの共生社会」などと言いながら、障害者を五輪から排除して、別扱いするパラリンピックこそ最大のバリアーであることを問題視しない報道姿勢を取り上げた。

     次に社会の反応を確認する街頭インタビューでは、2人1組になって、街中の通行人にオリンピックやパラリンピックに何を期待するかヒアリングした。普段社内の同僚記者とすらほとんどしゃべらないのに、一緒に組んだ朝日新聞の記者と「親子連れが一番しゃべってくれるもんだよ」などと取材テクニックを交換し合った。うれしかったのは、私から何もリクエストしていないのに、チームのメンバーが私に「何かアイデア思いついたら言ってください。代筆します」と申し出てくれたこと。

     参加したどのチームからも報告されたのは世の中、特に20代女性の五輪・パラリンピックへの超無関心。その中で意外だったのは「実はオリンピックよりパラリンピックの方が広告収入が多いんですよ」と朝日の記者が話してくれたこと。

     グーグルのアクセシビリティー担当者には、伴走者がいないと走れないブラインドマラソンのような介助者の代わりにテクノロジーでバリアーを除く技術の開発を要望した。たとえば全盲の競泳選手がゴールに着いたことが介助者のタッピング(専用の棒で頭をたたくこと)の代わりに、振動などで分かるウエアラブルデバイスを水泳帽かゴーグルに取り付けるなどだ。

     写真の見えない視覚障害者にも理解できるように画像に代替テキストを付けるなどのウェブアクセシビリティーの話では、宮崎日日新聞の女性記者が「電子版ではスクリーンリーダーで読み上げさせたときに、視覚障害の方が聞きやすいように配慮しています」と話してくれた。

     2日間の同業他社との交流で確信したのは、全国紙も地方紙も事情は同じ、どの会社も苦しい新聞業界。超党派で力を合わせる取り組みに大賛成!【岩下恭士】