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ユニバ・トーク

12月20日 AIひばり

 日本歌謡界の女王、美空ひばりさんが没後30年にして“新曲”を披露した。ひばりさんの熱烈なファンというわけではない。しかし、たまたま「愛燦燦(あいさんさん)」の歌詞を覚えたこともあり、カラオケに行くと必ず歌っている。

     すでにこの世に去っているひばりさんの歌声をよみがえらせたのはAI(人工知能)技術。ヤマハが開発した歌声合成技術「VOCALOID:AI」(ボーカロイド:エーアイ)だ。音声合成技術を使ってコンピューターに歌わせる試みはクリエートシステム開発社の「ドキュメントトーカ」や、バーチャルアイドルシンガーの初音ミクを生み出したヤマハの歌声合成技術「VOCALOID」などがすでにある。

     今回、発表された新曲「あれから」は、ひばりさんの代表曲にもなった名曲「川の流れのように」を手がけた秋元康さんが作詞を、佐藤嘉風さんが作曲を担った。実在した歌手の歌声を再現した世界初の試みで、9月には「NHKスペシャル」でテレビ放送された。iTunesなどの音楽配信サイトで公開されたライブ音源を早速聞いてみた。

    「あれから どうしていましたか? 私も歳を取りました 今でも 昔の歌を気づくと 口ずさんでいます 振り向けば幸せな時代でしたね」

     ボーカロイドAIは、ひばりさんらしい歌唱法や話し方を忠実に再現していた。「昔の歌をーー」や「時代でしたねーー」など、音が伸びるフレーズの終わりのビブラートはいかにも彼女らしい歌い回しで、思わず聴き入ってしまう。NHKスペシャルでは、ライブに参加したファンの多くが涙を流していた。録音や録画とは違う感動が、確かにそこにはあった。

    「あなたのことをずっと見ていましたよ。頑張りましたね。さあ私の分まで、まだまだ、頑張って」

     まるで、どこかで生きているひばりさんから語り掛けられているような感覚に襲われた。大みそかに放送される第70回NHK紅白歌合戦では、ステージの上に4K・3D映像のひばりさんが登場。AIひばりの歌声が披露される。【岩下恭士】