メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ユニバ・トーク

3月3日 冒険家の条件

 「全世界に認められる偉大な冒険家の条件は何か?」--。こう聞かれたら、僕はただ一つ、「単独行」を挙げたい。単独行とはパーティーを組まずに登山や大陸横断などを一人でやり遂げることだ。

     1927年5月21日、小型プロペラ機で世界初となるニューヨーク-パリ間大西洋単独無着陸横断飛行を達成した25歳のアメリカ人、チャールズ・A・リンドバーグ。78年の単独北極圏到達、84年の世界初マッキンリー冬期単独登頂のほか、アマゾン川単独いかだ下り、北極点単独犬ぞり到達、グリーンランド単独犬ぞり縦断など数々の単独行を達成した植村直己。この2人が誰もが認める冒険家になったのは、まさしく単独行達成がもたらしたものだと思う。

     25歳当時に7大陸最高峰登頂最年少記録を樹立し、2008年に第12回植村直己冒険賞を受賞した野口健さん(46)も2月放送のテレビ番組で、33時間半にわたって一人で操縦し続けたリンドバーグの偉業を「孤独との闘い」とたたえた。野口さん自身もマッキンリーの単独登山経験があり、誰の助けもない中、クレバスに落ちかけたこともあるという。

     世界的な冒険家を表彰する植村直己冒険賞は、植村直己の出身地である兵庫県豊岡市が主催しており、今年は米国在住の全盲男性、岩本光弘さん(53)が選ばれた。岩本さんは昨年、米サンディエゴから福島県いわき市・小名浜港までの太平洋およそ1万4000キロをヨットで無寄港横断を果たしている。この受賞で一つ引っかかったことは、サイテッド(晴眼者)が同行していたという点だ。

     数年前まで僕自身も東京湾で行われているブラインドセーリングに参加していた。だが、「ブラインド」とうたいながら、実態は目の見えるスキッパー(艇長)やクルー(乗組員)が操船を行い、ブラインドはときどきティラー(かじ)を握るだけ。もちろん、岩本さんの場合は2人きりなので、かなりの作業を自分でこなしたとは思うが、ヨットの世界では「シングルハンド」という単独行こそが評価される。

     今はGPS(全地球測位システム)などのナビシステムを使えば、全盲者でも航路を判断することが十分可能になりつつあり、「シングルハンド」に挑戦する全盲者も生まれている。新しい技術を駆使し、新たな挑戦をする全盲冒険家の誕生も期待したい。【岩下恭士】