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ユニバ・トーク

5月21日 ピンチをチャンスに!

 「新型コロナウイルス感染拡大の収束を目指す緊急事態宣言下で見えない病原菌におびえながら不自由な毎日を送る障害者」というストーリーは、「障害者は苦難の克服を目指していつもひたむきに頑張っていなければならない」というメディアが好みそうなテーマに通じるものだ。だが本当にそうだろうか?

     密集、密接、密閉を避ける「3密規制」で推奨される在宅勤務や学校閉鎖などの中、朝夕の通勤時間に電車に乗ってみると、車内に人けはなく、いちいち白杖(はくじょう)を前に出して人の有無を探らなくてもどこでも座席は座り放題。ホーム上にもほとんど人がいないから、点字ブロックの上を思いっきり歩くことも可能だ。真正面からぶつかってくるような不届きな歩きスマホの若者たちも見当たらない。飲食店の店内はガラガラなので、店員も飛んできて大歓迎してくれる。ちなみに行きつけの飲み屋はどこも閉まっているので、これを機に禁酒を再開した。

     実は3密回避奨励で真っ先に危惧したのは、街の中で僕ら視覚障害者が人の目を借りる機会が失われてしまうのではないかということ。自力で支払いをしなければならない無人店舗みたいなものが増えれば、一人で買い物もできなくなるからだ。だが今のところ、コンビニやスーパーなどでも、一度も助けが得られずに困ったことはない。無人駅かと思われたホーム上でも遠くから乗降客らしい若い女性が走ってきて「先頭ですよ、大丈夫ですか?」などと声をかけて手を貸してくれた。「濃厚接触になるから近寄らないで」などと思われているみたいだと感じるようなことはまだ一度もない。

     一方、3密解消のために推奨される「テレワーク」や「ウェビナー」と呼ばれるネット上で開催される講演会や授業などが増えたことで、にわかに脚光を浴びることになったのがZoomやSkypeなどオンラインで自宅から参加できるテレビ会議用コミュニケーションツールだ。特に外出や移動の難しい重度の障害者にとって自宅に居ながら参加できるイベントが増えたことは、社会参加の機会を増やすことになった。僕の職場にもオンライン記者発表会の案内が続々と送られてくるようになり、これなら全盲の僕も会場までのアクセスを考えることなく家から気軽に参加できそうだなと喜んでいるところだ。「コロナ災転じて福となす」というところか。【岩下恭士】