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ユニバ・リポート

煉獄さんの言葉にうるうる--ハロー!ムービーで味わう「鬼滅の刃」

 今や社会現象になっている空前の大ブームを巻き起こしたアニメ映画「劇場版鬼滅の刃 無限列車編」。10月16日の公開と同時に視聴覚障害者も健常者と同じように作品を楽しめる仕組み「HELLO!MOUVIE(ハロー!ムービー)」が用意された。新型コロナウイルス禍にもかかわらず、鬼滅ファンが場内を埋め尽くした12月6日の日曜日、全盲記者もTOHOシネマズ六本木ヒルズで鑑賞した。

     「ハロー!ムービー」は、聴覚障害を持つ人にはセリフや音を文字で表示する日本語字幕を、視覚に障害を持つ人にはシーンや人物の表情などを言葉で解説する音声ガイドを配信するアプリ。iPhoneやiPod touch用はアップルのAppストアから、アンドロイドスマートフォン用はグーグルプレイから無償でダウンロードできる。エプソンのMOVERIO BT-350などスクリーンに重ねて字幕表示が投影されるスマートグラスは一部の映画館で貸し出し用端末が用意されている場合もある。現在、全国413館(IMAXシアター 38館含む)でいつでも利用可能だ。

     映画鑑賞当日、全盲記者は上映前にアプリを起動、音声ガイドの対応映画リストの中から「劇場版鬼滅の刃 無限列車編」を選択すると端末に音声ガイドデータが保存され、待機中になった。「必ず機内モードをオンにしてください」と音声メッセージが流れるのでそのようにする。音声ガイドは有線またはブルートゥース無線で接続されたイヤホンから聞くが、本編のスクリーン音声が無音になるようなときは端末のボリュームボタンを下げるなど周囲への音漏れに注意する必要がある。

     音声ガイドはスマホのマイクが映画本編の音声を拾って流れるが、音声ガイドの利用に座席位置は左右されないからどこに座ってもかまわないものの、スクリーンの音声は人物の位置や動きに呼応して話者が動くのが分かるので、できれば中央付近の座席を選びたい。開発したのはUDCast(ユーディーキャスト)と同じ開発社のエヴィクサーだ。

     「鬼滅の刃」は、幼い弟妹たちら家族を鬼に殺され、妹を鬼にされた竈門炭治郎が仲間とともに鬼退治に立ち上がる勧善懲悪物語。「週刊少年ジャンプ」に連載された原作は、吾峠呼世晴。アニメというから子供や若い人たちが多いだろうと思いきや、場内には親子連れだけでなく、中高年層の鑑賞者も目立った。周囲の席からすすり泣きすら聞こえた終了後、コミックを読破しているらしい子連れの若い母親は「やっぱり煉獄さんの言葉にうるっとくる」などと話していた。

     格闘シーンが多いため、「炭治郎の刀を避ける魘夢(えんむ)が術を繰り出す」「鬼の首をぶった切る煉獄」など生々しい言葉と体に伝わる大音響でスクリーンを見ていない記者も知らず知らず手に汗握る瞬間を覚えた。

     また「車掌に切符を渡す炭治郎、夢限列車のムはユメ」など日本映像翻訳アカデミー「バリアフリー視聴用音声ガイド&字幕ライター養成講座」1期生の菅田奈央さんの描写は細かい。ただ一点、どうしてもイメージできなかったのが「客車に肉の塊が増殖し続ける」という説明。同行してもらったヘルパーに訴えると「ミミズのお化けみたいな感じ」と表現されてやっと映像が思い浮かんだ。

     「己の弱さやふがいなさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を食いしばって前を向け」など炭治郎に数々の助言を与える鬼殺隊の柱(幹部)煉獄杏寿郎の名言はコロナ禍を乗り切る言葉の力として共感を呼んでいる。

     この日12月6日までに、観客動員23万9874人、興行収入3億3650万5700円を記録、公開から52日間の観客動員数は計2152万5216人となった。ちなみに日本歴代興行収入ランキングは、現在、「千と千尋の神隠し」に次いで第2位という。

     音声ガイドと日本語字幕の映画バリアフリーコンテンツを配信するサーバーを管理運営するNPOメディアアクセスサポートセンターでは、最新のハロー!ムービー公開映画情報などを紹介する音声番組をポッドキャストで配信中だ。【岩下恭士】