エジプトでDAISY読書普及ウェビナー開催--JICAが全面協力

 通常の活字読書が難しいアラビア語圏の視覚障害者や発達障害者らを、最新の電子書籍フォーマットを活用して支援する「DAISY イン エジプト2021」プロジェクトのオンラインセミナー(ウェビナー)が2日、開かれた。

     ウェビナーはエジプト通信・情報技術省、国立図書館、アレクサンドリア図書館、国際協力機構(JICA)が主催。エジプトと日本の図書館職員や海外支援従事者、両国の障害当事者らが参加した。当日はエジプト時間正午、日本時間午後7時からウェブ会議システム「Zoom」を使って全世界にライブ配信。英語とアラビア語の音声と字幕、アラビア語手話の同時通訳も設けられた。

     エジプトでは2018年、障害の有無にかかわらず、誰もが読書の自由を享受できる社会の実現を目的とするアクセシビリティー指針が打ち出され、デジタル録音図書の国際規格であるDAISY(デイジー)を利用できるアラビア語環境の整備が始まった。DAISY推進の立役者である日本DAISYコンソーシアム運営委員長の河村宏さん(NPO法人・支援技術開発機構副理事長)は、JICAのエジプト支援プロジェクトで同国におけるDAISY普及に協力している。

     ウェビナーの中で河村さんは、世界知的所有権機関(WIPO)のマラケシュ条約に言及。これは、著作権者の権利を制限して媒体変換などを認め、障害者が活字書籍にアクセスできるよう保障するもの。河村さんは「デジタル技術の進展で媒体変換は容易になった。後から録音図書を作るのではなく、新刊の発行段階から誰もが読める『ボーンアクセシブル』がこれからは求められる」と訴えた。

     全盲のDAISYユーザーであるマフムード・アンワル博士は「紙の点字本はかさばる。授業中に晴眼者の生徒と同じページを開くのに遅れる。DAISYブックなら瞬時にページがヒットする」と電子教科書へのDAISYの活用メリットをアピールした。

     自身がディスレクシア(読字障害)で初のDAISYユーザーとして、小学5年生のときからDAISY教科書で学んできた小沢彩果さんは、19年にJICAのDAISYプロジェクトチームのメンバーとしてエジプトの障害児にDAISY読書を紹介した体験に触れた。読み上げ中の文字がスクリーン上でハイライトされることなど視覚的にも応用できることを指摘。小沢さんは「日本のオンラインライブラリーである『サピエ』は視覚障害者の利用に限定されていたが、今は他の障害で読書の難しい人にも公開されている」とDAISYプロジェクトの可能性をアピールした。

     当日、言語と障害の壁を超えたウェビナー開催に取り組んだJICAのDAISYプロジェクトチームの河村愛さんは「日本からも30人近いイベント登録があり、多くの方にご参加いただけて、大変うれしく思いました。テクニカルなアクシデントも多々あったのですが、何とか二つの言語の字幕、同時通訳、アラビア語の手話を付与したウェビナーを実現できたことは大きな自信になりました」と話し、ネットを活用したコロナ禍のバリアフリー実現の可能性を実感していた。【岩下恭士】