ユニバ・トーク

11月25日 目隠し碁

 目隠し碁とは「4の16星(ホシ)」「17の4小目(コモク)」などと、碁盤を見ないで言葉だけで碁石を置いた位置を伝えながら行う囲碁対局のこと。20年前に囲碁ブームを巻き起こした囲碁アニメの傑作「ヒカルの碁」では、主人公・進藤ヒカルのライバルでプロ棋士の親を持つ中学1年生、塔矢アキラが囲碁部の先輩から「名人の子供なら目隠し碁でやってみろ」と言われて挑戦を受ける場面がある。

     視覚障害者でも打てる囲碁盤を使って、目の見える人も見えない人も囲碁を楽しめる碁会所が東京都中野区にあることを知って、先月から通い始めた。正直、こちらは囲碁のルールなど全く知らない超初心者なので、通常用いられる19路盤の4分の1の大きさの9路盤から始めた。

     碁会所には、視覚障害者にも打ちやすいように開発された立体囲碁盤「アイゴ」が置いてある。碁石を置く線が凸状に盛り上がっていて、中央の天元や、9路盤では四つの星と呼ばれる打点に凸マークが付いている。碁石は黒石の方に凸点が付いており、盤上で触りながら黒石と白石の打点の位置関係が確かめられる。対局では打った後に「打ちました」「アタリ」などと必ずお互いに声をかけて、打った碁石の上に指を置いて相手に触らせるのがルールだ。

     入社間もない三十余年前、大阪本社の点字印刷室には立派な碁盤があって、昼休みなどに晴眼者の先輩部員たちが囲碁を楽しんでいた。「黒石はざらざら、白石はつるつるしているから見えなくても触ってわかります。僕にも囲碁の打ち方教えてください」と頼んでみたが、「囲碁は碁盤が見えないとできないから」と相手にされなかった。それ以来、ずっと囲碁には全く関心がなかったが、最近になって視覚障害者でも囲碁の有段者が何人もいることを知った。プロ棋士でも、通常用いられる19×19の碁盤では碁石の数も、終局までの打ち手も多く記憶にとどめておくのは難しい。だが、9路盤なら塔矢のように目隠し碁で対局できる棋士もいるらしい。

     碁会所で僕の囲碁指導に当たってくれたのは、日本視覚障害者囲碁協会の代表理事で、自身も全盲の柿島光晴さん(44)。驚いたのは、対局後に両者の打った手を再現しながら問題点を丁寧に解説してくれたこと。つまりすべての棋譜が頭の中に入っているというわけだ。「パラスポーツは晴眼者のサポートがないとできませんが、囲碁は全盲者だけでもできるんです」と話した柿島さんの言葉に心が躍った。僕も早く19路盤が打てるようになりたい。

     全国どこからでも参加できるオンラインでの囲碁対局も行われているので、視覚障害者囲碁に興味のある方は障害の有無にかかわらずぜひ体験してみてほしい。問い合わせは日本視覚障害者囲碁協会、電話090・6138・5285の柿島さんまで。【岩下恭士】