ユニバ・トーク

6月9日 区長への手紙

 JR渋谷駅西口から歩いて5分の所に渋谷区文化総合センター大和田という区営の施設がある。センター内にはプラネタリウムやコンサートホールがあり、区外からの利用者も多い巨大なコミュニティーセンターだ。館内にあるクリニックでは区民向けのがん検診が行われているので、区民である全盲の僕も毎年5月に受診している。ところがこの施設、大東京のど真ん中とは思えないバリアだらけの建造物でいつも悩まされている。

     自宅からはタクシーで5分程度で行けるので、ドライバーに「正面玄関に付けてください」と頼むと、「玄関までは入れないからここから歩いてください。300メートルくらい先です」と言われて建物の方に歩いていくが入り口らしきところが分からない。もちろん、入り口を音で知らせる視覚障害者向けのチャイムや点字ブロックなどは全然敷設されていない。通行人がいれば声をかけて聞くのだが誰も通らない。午前9時前だというのに、警備員らしき人もいない広大な無人空間なのだ。20分くらいうろうろしていたら、やっと足音が聞こえたので「すみません、入り口はどこですか?」と声をかけた。ところがその高齢の女性も「私も行くところなんですけとどこから入るのかしら?」と迷っている。

     2015年に世田谷区と並んで日本で初めて同性パートナーシップ制度を認めた渋谷区の長谷部健区長は、以前僕のインタビューに答えて「障害の有無や国籍の違い、性的嗜好に関わらず、すべての人が当たり前に暮らせる渋谷区を目指している」と話し、「超福祉展」というダイバーシティー(多様性)を尊重する啓発イベントも精力的に開催してきた。その渋谷区にこの施設ってどういうこと?

     そこで区のホームページにある「区長への手紙」から改善を要望してみたら以下のような回答をいただいた。銀座、六本木、原宿などと並んで、渋谷と言えば東京の人気繁華街だ。再開発工事中の渋谷、早急の改善に期待したい。【岩下恭士】

    区長への手紙回答

     このたびは、「区長への手紙」にご意見をいただき、ありがとうございました。

     「区長への手紙」への回答を、下記の通りお送りいたしますので、ご確認ください。

    岩下恭士 様

     日頃より、渋谷区政にご理解とご協力をいただき厚くお礼申し上げます。

     また、このたびは「区長への手紙」にご意見をお寄せいただきましてありがとうございました。

     文化総合センター大和田をご利用いただく際に、大変ご不便をお掛けしたことをお詫び申し上げます。

     岩下様にご指摘いただいたとおり、入口につきましては大変分かりづらく、また北側入口から当館1階の各施設までの誘導用点字ブロックが十分ではありませんでした。皆さまに安全・安心にご利用いただけるよう、今後誘導用点字ブロックの設置等、検討を行なってまいります。

     渋谷区では、渋谷駅周辺地区において一体的なバリアフリー化を推進するため、平成30年3月に「渋谷駅周辺地区バリアフリー基本構想」を策定いたしました。これに基づいて、文化総合センター大和田につきましてもバリアフリー化に着手してきたところですが、今後も引き続き関係事業者に対して理解と協力を求め、すべての方が利用しやすいバリアフリー社会の実現を目指してまいりたいと考えております。

     今後とも皆さまからお寄せいただいたご意見を参考にさせていただき、より良い区政運営に努めてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

    渋谷区長