ユニバ・トーク

1月8日 韓国で感じたこと

 昨年末にソウルのIT企業からお誘いをいただいて韓国に行った。現地では日本でも何度も顔を合わせている日本語が話せる金さんがずっとガイドしてくれたので困ることは何もなかったが、もしも全盲の僕が単独で旅するなら韓国語会話が必須だと感じた。

     それでも驚いたのは、ソウル市内の鉄道乗り換え駅では日本の駅のように点字ブロックがしっかり敷設されており、構内アナウンスでは一部外国語対応もされていたことだ。券売機やエレベーターのボタンにも点字表示があったが、残念ながら全部ハングル。駅ホームには日本のホームドアに相当するスクリーンドアが設置されており、金さんの話ではソウル市内ではほとんどの駅がこの構造だそうだ。

     ホームに電車が進入する前にはどの駅でも共通のファンファーレが流れて、発車時には「チュリムンタスニダ(ドアが閉まります)」の自動アナウンスが流れ、駅員が肉声でも復唱していた。

     これまで同国を旅したことのある多くの外国人障害者から、韓国人は異邦人に対してよそよそしくて緊張すると聞いていた。僕自身、留学していたアメリカで見かけた多くの韓国人や中国人が仲間内だけで群れている印象を受けたが、とんでもない誤解のようだった。

     ソウルではラッシュ時の地下鉄の中で、白杖(はくじょう)を突きながら大きなバッグを抱えた僕を座らせてくれようとしたり、席を立つ時には隣の乗客が腕を貸してくれたりした。おかげで「カンサハムニダ(ありがとう)」だけは自然に口に出るようになった。「新しいプロジェクトが実行されたら、ぜひまたお越しください」と言われたので、ハングル点字を習得しておこう。【岩下恭士】