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スミレの香り

馳星周さんの新連載小説「スミレの香り」です。犬の訓練士をしていた男が、愛犬と各地を旅ししつけ教室などを開いている中で、事件に遭遇します。馳さんは1996年に「不夜城」でデビューし、人間や社会の暗部を描いてきました。今作では「許しについて書いてみようと思っている」と話しています。

  • /225 馳星周 画 田中靖夫

     わたしは声をひそめた。周りの視線が急に気になってきて、書店を出た。「そうだ。どうやら、<常葉ファーム>経由で大量の窒素肥料があの工場に流れていたようだ」 窒素…

  • /224 馳星周 画 田中靖夫

    「わたし、なにも知らなくて、沙織ちゃんのことこれっぽっちも疑ってなくて。呑気(のんき)なことばっかり言ってて。もしかすると、真波ちゃんはあのとき、酷(ひど)い目…

  • /223 馳星周 画 田中靖夫

    「山にはソロで登ることがほとんどだと言ってましたし……」 ソロというのは単独で山に登るという意味だ。「一度だけ、穂高岳の山小屋で知り合ったっていう女の子たちがこ…

  • /222 馳星周 画 田中靖夫

    「藤井さん……」 田村久美の瞼(まぶた)は腫れていた。「よろしいですか?」「はい、どうぞ。今、ちょうどコーヒーを淹(い)れたところなんです。よろしかったら――」…

  • /221 馳星周 画 田中靖夫

     知子の言ったとおり、真波はスミレになると決めたのだろう。知子をゆるし、周りの人間たちをゆるし、自らも成長した。 カムイと同じだ。 犬は人をゆるす存在である。 …

  • /220 馳星周 画 田中靖夫

    「必ず見つける」「信じてるわ。こんなにお兄ちゃんのことを信じたことはないわ」「馬鹿野郎」 わたしは苦笑し、電話を切った。 津田がわたしを見つめていた。電話が終わ…

  • /219 馳星周 画 田中靖夫

    「ハックルベリーの本に、真波の書き込みがあった。真波にとっては大切な言葉らしいんだが、聞いたことはあるか? ゆるしとは――」 わたしは真波の書いた文章を読み上げ…

  • /218 馳星周 画 田中靖夫

     知子が、この本のどこがそんなに気に入ったのかと訊(き)いても、真波は曖昧に笑うだけでちゃんと答えてはくれなかったらしい。 長じるにつれ、真波が『ハックルベリー…

  • /217 馳星周 画 田中靖夫

     わたしは唇を嚙(か)んだ。須田がわたしの肩を叩(たた)いた。「防犯カメラやNシステムの解析を急がせている。いずれ、真波さんは見つかるはずだ」 須田なりのやり方…

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