
長年、政治の裏側を取材してきた与良正男専門編集委員が、永田町に鋭く斬り込みます。
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投票しないと始まらない=与良正男
2022/7/6 13:04 916文字参院選が終盤を迎える中で、改めて注目したい数字がある。 毎日新聞が6月18日実施した全国世論調査で、「与党と野党のどちらに議席を伸ばしてほしいか」と質問したところ、「野党」と答えた人は42%で、「与党」の37%を上回ったことだ。 与党が圧倒的多数を占めていては政治に緊張感がなくなる。だから「与野党
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首相と自民の争点ぼかし=与良正男
2022/6/29 13:13 921文字ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中で日本の防衛はどうあるべきか。参院選で各党が主張を競い合うのは当然だ。 でも本当に選挙の争点になっていると言えるだろうか。私は懐疑的だ。それは自民党の主張があいまいだからにほかならない。 同党の公約にはこうある。 「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以
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親子で投票所に行こう=与良正男
2022/6/22 13:03 925文字公示されたばかりなのに、早々と「参院選の投票率は低そうだ」という声が聞こえてくる。 3年前の前回参院選は5割を切って48・8%。史上2番目に低い数字だった。今回はさらに下回る可能性が確かにある。 マスコミ、とりわけテレビの参院選報道は少ない。関心が持てないのは無理もないかもしれない。「有権者の投票
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お手軽過ぎる野党報道=与良正男
2022/6/15 13:07 924文字野党の役割とは一体、何なのだろう。そんなことを改めて考えさせられた通常国会だった。 この国会で一番驚いたのは、国民民主党が政府の新年度予算に賛成したことだ。個別の政策ならともかく、内政・外交全般にわたる1年間の政府政策を裏付ける本予算に賛成するのは、やはり野党として一線を越えていると思う。 日本維
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「岸田VS安倍」という打算=与良正男
2022/6/8 13:04 937文字いっそのこと、自民党が二つに分かれた方が夏の参院選は投票しやすくなるのに……。そう考えるのは私だけだろうか。 岸田文雄首相の政策に安倍晋三元首相が次々と注文をつけて、岸田氏があっさりと妥協する。そんな政治が繰り返されている。 国民への分配か、経済成長か。財政再建を進めるのか、巨額な財政出動を続ける
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「倍増」乱発の落とし穴=与良正男
2022/6/1 13:14 930文字岸田文雄首相は「倍増」とさえ言っていれば、参院選を乗り切れると考えているのだろうか。 昨秋の自民党総裁選で掲げたのが「令和版所得倍増」。今年1月には「若者世代の世帯所得に焦点を絞った倍増」と若干修正したが、その後も「子ども政策に関する予算倍増」「資産所得倍増」……と「倍増」の乱発が続く。 数字の裏
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「国会嫌い」体質は深刻だ=与良正男
2022/5/25 13:04 910文字「棚ぼた予算委員会」と呼ぶ人がいるそうだ。 今年度の補正予算案を審議するため、ようやく開かれることになった衆参予算委員会のことだ。夏の参院選前に、岸田文雄首相と立憲民主党の泉健太代表が国会で議論を交わす機会は、これが最後となるかもしれないという。 経緯をおさらいしておこう。 自民党は当初、「物価高
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「日銀子会社」発言の核心=与良正男
2022/5/18 13:01 906文字安倍晋三元首相の発言が物議を醸し、政府があわてて火消しに走る。そんな奇妙な政治が続く。 米国の核兵器を日米共同で運用する「核共有」論に続いて、今度は「日銀は政府の子会社」発言である。 先の講演で安倍氏は「日銀は政府の子会社なので(国債の)満期が来たら、返さないで借り換えて構わない。心配する必要はな
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色あせる新しい資本主義=与良正男
2022/5/11 13:10 920文字ますますアベノミクスと似通ってきたと思う。もちろん、岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の話である。 大型連休中の5日、首相は訪問先・ロンドンの金融街・シティーで講演し、約2000兆円とされる日本の個人金融資産を貯蓄から投資へと誘導する「資産所得倍増プラン」を始めると表明した。そして、こう呼びか
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戦う相手を間違えている=与良正男
2022/4/27 13:13 917文字7月に予定される参院選は、岸田文雄政権の評価は二の次で、野党間のつばぜり合いばかりが目立つ選挙戦になってしまわないか。そんな嫌な予感がしてきた。 とりわけ立憲民主と国民民主両党の争いは、もはや遺恨試合の様相である。 「民主党」という略称を取り合っているだけではない。そこまでするか――と、あぜんとす
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防衛費増額で何を削る?=与良正男
2022/4/20 13:09 919文字ロシア軍のウクライナ侵攻が続く中、自民党では日本の防衛費の増額を求める声が一段と強まっている。米国の核兵器を日米共同で運用する「核共有」の論議と同様に、ここでも旗振り役は安倍晋三元首相と言っていいだろう。 安倍氏は講演や派閥の会合で、防衛費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げる目標を示すべきだと
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維新も認めた焼け太り=与良正男
2022/4/13 13:14 925文字世間ではこれを「焼け太り」と呼ぶのだと思う。国会議員に月100万円支給されている「文書通信交通滞在費」(文通費)に関する与野党合意のことである。 合意によれば、在職1日でも満額100万円もらえる今の仕組みを日割り支給に変える。そこまでは当然だ。ところが共産党を除く各党は、法律の名称と目的まで変更す
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「ミスター検討」の半年間=与良正男
2022/4/6 13:04 915文字「あらゆる選択肢を排除せず、検討したい」という岸田文雄首相の言葉を何度聞いただろう。 政権発足から半年が過ぎ、「結局、首相が何をしたいのか分からない」という声は政界でも強まる一方のようだ。野党が岸田首相を「ミスター検討」と呼びたくなるのも無理はないと私も思う。 ただし、そんな私も少し驚いた場面が
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任期延長話の裏テーマ=与良正男
2022/3/30 13:02 934文字今なら国民の理解が得やすいと考えているのだろう。万一の緊急事態に備えて、国会議員の任期延長規定を憲法に設ける案が、改憲論議の焦点になってきた。 先日の衆院憲法審査会で、自民党は「規定を設けるのは必須だ」と主張し、任期延長規定の必要性について考え方をまとめるよう求めた。温度差はあるものの、公明、日本
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「聞く力」の大盤振る舞い=与良正男
2022/3/23 13:03 910文字評判の悪さにあわてているのだろう。新型コロナウイルス感染拡大の影響で受給額が減る年金生活者への支援策として、自民、公明両党が政府に提案した「一律5000円給付案」への批判や不満が両党内からも出ている。 ただし聞こえてくるのは「近づく参院選目当てのばらまきでしかない」という声ではない。「たった500
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安倍外交の消えぬ罪=与良正男
2022/3/16 13:11 903文字参加した人たちは、どんな思いだっただろう。振り返れば何とも罪作りな大会だった。 2019年2月7日の「北方領土の日」。北海道根室市では恒例の住民大会が開かれていた。 参加者がしていた鉢巻きには、例年の「返せ!北方領土」の文字はなく、締めくくりのシュプレヒコールでも「北方領土は日本の領土」の言葉が消
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「令和臨調」の再挑戦=与良正男
2022/3/9 13:08 918文字学者や経済人、労働組合関係者らが集まって「令和臨調」という名の民間組織を近くつくるという話を、ニュースで知った人も多いだろう。 6月に正式に発足し、「統治構造改革」(つまり政治改革)▽「財政・社会保障」▽「国土構想」――をテーマに議論し、提言していくという。いずれも長く日本が先送りしてきた課題であ
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「翼賛体制」への一歩か=与良正男
2022/3/2 12:53 931文字「いよいよここまで来てしまったか」……と深いため息をつく。2月22日、衆院を通過した政府の新年度予算案に国民民主党が賛成したことだ。 個別の法案や、緊急の政策を実現するための補正予算案に賛成するのならともかく、本予算案は内政、外交全般にわたる1年間の政府の政策を裏付けるものだ。 それに賛成するのは
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NHK「字幕」問題の本質=与良正男
2022/2/16 12:55 912文字「不確かだった」では済まされないと、ようやく判断したのだろう。昨年末、放送されたNHK・BS1の番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」で付けた字幕について、NHKは10日、「誤り」と認める内部調査報告書を公表し、謝罪した。 問題となっているのは、匿名の男性が登場する場面に「五輪反対デモに参加していると
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「弱腰」批判に抗する勇気=与良正男
2022/2/9 12:43 934文字これでは日韓関係の負の連鎖を断ち切ることはできないだろう。そんなあきらめにも似た思いを強くする。 2月3日、林芳正外相は韓国の鄭義溶(チョンウィヨン)外相に電話した。相次ぐ北朝鮮のミサイル発射に対し、日韓両国、そして日米韓3国で連携することを確認したという。 だが世界文化遺産の登録を目指し、日本政
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