よくテレビの健康番組などで「あなたの余命は何年?」という話題があるでしょう。余命とは「残された寿命がどれくらいか?」のことです。一般的に生活習慣病の方の余命は、ベテランの医師でも予想しにくいものです。例えば、コレステロール値や血糖値が高く、たばこを吸っている方は、動脈硬化が著しいのはよく知られています。ただ、動脈硬化だけならよっぽどひどくならないと症状が出ません。最近では軟らかい粥(かゆ)状動脈硬化がストレスなどで破裂し、血流を阻害することが心筋梗塞(こうそく)などの主な原因なのではないかといわれています。そのために、いくら動脈硬化が強かったり多かったりしても、どのような時にそのような破裂が起こるのかはベテランの医師でも予想しがたいのです。逆に軽い動脈硬化でも破裂すれば、心筋梗塞になりますので安心もできません。

 そういうわけで、一般に余命がわかりやすいのは悪性腫瘍の場合です。最近は悪性腫瘍の治療が格段に進歩していますので、他の臓器に転移をしていなければかなりの確率で長生きすることができると思います。そのために悪性腫瘍の場合は、他の臓器に転移しているのかが余命の大きな決め手になります。その転移の度合いによって、あとどれぐらい生きることができるのか、ベテランの医師ならある程度予想することができます。

 さて、私の前立腺がんは残念なことに全身の骨に転移しております。そのため手術や放射線療法は基本的に難しいです。このような時には…

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大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。