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睡眠の質の低下にぜんそく、時に命の危険も 夏に大繁殖するダニがもたらす三つの問題

金子至寿佳・日本赤十字社 和歌山医療センター 糖尿病・内分泌内科部長

 命の危険すら感じる暑さが続いています。実はこの季節、害虫のダニが増えやすいのはご存じですか。ダニは眠りを妨げたり、気管支ぜんそくを起こしたり、種類によっては深刻な感染症やアレルギーを引き起こしたりするやっかいな存在です。どうすればダニの健康被害を防ぐことができるのでしょうか。今回はその処方箋をお伝えします。

夏はダニの繁殖に最適

 夏のこの時期、ダニは大繁殖します。繁殖するのに適した気温や湿度に加え、密閉性の高いマンションで生活する人が増えた▽エアコンの使用と、それに伴い窓の開閉をあまりしなくなった▽カーペットを多用するようになった▽あまり大掃除しなくなった――ことなどが要因として挙げられます。それに伴い、健康被害に悩まされる人も増えていることでしょう。

 ダニの問題は主に、

 1.かまれることでかゆく、不快な状態が続く

 2.死骸を吸い込むことで、ぜんそくやアレルギー性皮膚炎になる

 3.感染症の原因となる

の三つに整理することができます。そして、それぞれにおいて、原因となるダニの種類が異なります。ダニによって何がもたらされるのか、具体例を通して見ていきましょう。

イエダニ―おなかや太ももを刺す

 体長0.7mm前後と小さく、ネズミや鳥に寄生する吸血性のダニです。ネズミや、ペットに付着するなどして家の中に入ってきます。衣類に潜り込み、おなかや二の腕、太ももの内側を刺し、強いかゆみと皮膚が赤くなる現象が3~4日以上続きます。

 対策として、ダニ除け防虫剤は効果がありますが、小さなお子さんがいる時は天然のものがよいでしょう。また、服を着る前に掃除機をかけると効果的です。「ダニをとるのに掃除機は効果がない」というネット交流サービス(SNS)を見たことがありますが、そんなことはありません。私も夏に海外旅行から帰ってきた日は、ダニに体中かまれて大変でしたが、ダニよけスプレーを吹きかけ、掃除機をかけてダニを吸い取ることで、熟睡することができました。

チリダニ―アレルギーを引き起こす

 体長0.3~0.5mmときわめて小さく、主にヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニの2種類があります。屋内のダニの85%を占め、フケやアカなどの皮膚片、ほこりやカビ、空気中の水分などをえさにしています。湿気のある暖かいところ…

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日本赤十字社 和歌山医療センター 糖尿病・内分泌内科部長

かねこ・しずか 三重県出身。医学博士。糖尿病医療に長く携わる。日本糖尿病学会がまとめた「第4次 対糖尿病5カ年計画」の作成委員も務めた。日本内科学会認定医及び内科専門医・指導医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医・指導医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・指導医、日本老年病学会認定老年病専門医・指導医。インスリンやインクレチン治療薬研究に関する論文を多数執筆。2010年ごろから、糖尿病診療のかたわら子どもへの健康教育の充実を目指す活動を始め、2015年からは小中学校で出前授業や大人向けの健康講座を展開している。