「ここは関税面で欧州連合(EU)の外にある。欧州の中でもユニークな場所だ」
アドリア海に面し、スロベニアとの国境に位置するイタリア北東部の港湾都市トリエステ。現地を訪れると、あちこちでこんな話を聞いた。港だけでなくその周辺エリアも輸入品の関税や手続きが優遇される「フリーゾーン」だという。一体どんなものなのか。
地元の物流会社の営業担当役員、ファビオ・プレドンザーニ氏がフリーゾーンの一部だと案内してくれたのは、港から車で約20分の山あいにある倉庫エリア。税関機能も備えているというが、簡素で地味なつくりだ。
倉庫に入ると、積み上がったアルミニウムの塊が目に入った。欧州の自動車産業向けに海外から輸入されたものだという。
その隣には大型の段ボール箱が並んでいる。中身は1台15万ユーロ(約1900万円)の繊維機械という。「これは日本企業の機械だ。欧州の有名服飾メーカー向けに輸出しており、この倉庫はこの機械にとって欧州のハブとして機能している」とプレドンザーニ氏は得意げに説明する。
別の倉庫では、日本企業の船舶部品が入った大きな木箱が並んでいるのも見えた。
日本と経済連携協定(EPA)はあるが
日本とEUの間には経済連携協定(EPA)が発効済みだが、税負担軽減の恩恵を受けるためには複雑な手続きが必要になる。それとは別に消費税に当たる付加価値税(VAT)の支払いも求められる。しかし、「トリエステはフリーゾーンなので関税もVATも支払う必要はない」という。
この倉庫エリアは、港の競争力を高めようと、物流や商品管理をスムーズにする目的で2019年に造られた。
稼働中の三つの倉庫には月5万トンの物品が…
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