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米欧で相次ぐ銀行不安「リーマン・ショック再来」なのか

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
 
 

 米国の利上げの前途に突然、暗雲がたれこめた。3月10日、12日と二つの米銀が相次いで破綻したからだ。破綻したシリコンバレー銀行は西部、シグネチャー銀行は東部にあり、地理的には遠く離れている。しかし、SNS時代には「どこの銀行が危ない」という怪情報が瞬時に乱れ飛ぶ。そのうわさで預金が大量に引き出されて破綻に至った。

まずネットで起きた「バンクラン」

 現地の人は、破綻前に取引先のどこが資金を引き揚げたかという情報をかなり正確に知っており、預金を早めに引き出さなくてはいけないと大慌てになったと聞く。

 日本のテレビ報道では、現地の特派員が、銀行前に行列ができている映像を流したが、本当の取り付け騒ぎはネットの中で起きていたようだ。

 ネット取引も電話も通じないから直接店舗に行くしかないと人々は考えた。店頭の行列は、ネット内の大混乱の派生的効果として起きた。取り付け騒ぎは英語で「バンクラン(bank run)」と言う。「預金者が一斉に銀行に走る」という意味だが、現代は、それがまずネット内で起きた。「次はどこか」という不安心理はネット内の動揺がなくなるまでしばらく続く。

金融不安へのインパクト

 情報や不安心理は、世界中にも瞬時に飛び火する。米銀不安が浮上した翌週3月15日にはスイス大手銀クレディ・スイスの名前が挙がった。スイス政府は同業の金融大手UBSと合併することで問題を沈静化させようとしている。

 UBSは19日夜、クレディ・スイスを30億フラン(約4260億円)で買収すると発表した。

 米銀不安は、誤解を恐れずに言えばローカル問題だ。しかし、スイス大手銀はグローバルに事業展開する銀行の問題だから、…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。