英国が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加を申請した。昨年1月末の欧州連合(EU)離脱から1年余。欧州から太平洋に軸足を移し、どう繁栄していくのか。英国を迎え入れるTPPはどんな姿に変わっていくのか。かつてTPP首席交渉官として日本政府を代表し、2016年からはブレグジットを巡る混乱を現地で目の当たりにした鶴岡公二元駐英大使に聞いた。【聞き手・三沢耕平】
鶴岡元駐英大使に聞く
――英国のEU離脱を巡っては、EUとの交渉が難航。「合意なき(ノーディール)離脱」や国民投票のやり直しを求める声が出るほど大混乱に陥りました。その英国のTPP入りをどう評価しますか?
◆大使としてロンドンにいた頃、英国の閣僚や政府関係者に、EUを離脱したらTPPに参加できるという話をずっとしていた。「いろんな国と一から貿易協定を作っては大変だ」「TPPに入れば(TPP加盟の)11カ国は一網打尽ですよ」。自由度の高いTPPへの参加が英国にとっていかに有益か、そんな議論をしていた。
――地理的に遠い英国の参加には驚きがあります。
◆TPPは開かれた自由貿易構想だ。例えば、日本がEUに加盟することはできない。米国・メキシコ・カナダ協定(旧NAFTA=北米自由貿易協定)や南米南部共同市場(メルコスル)など、多くは加盟できる国を限定しているが、TPPは違う。特定の国を選んで連携する発想ではない。場合によっては、中南米やアフリカ、アラブ諸国、どこの国でも手を挙げれば入ることができる。英国の加盟表明は、そんなTPPの開放性を世界に示すメッセージになる。
――英国が加盟すると、TPPにはどんなメリットがあり…
この記事は有料記事です。
残り2985文字(全文3683文字)