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ロシア侵攻で英米石油撤退「サハリン1・2」日本は?

川口雅浩・経済プレミア編集部
「サハリン2」の液化天然ガス(LNG)を積んだ専用船=千葉県袖ケ浦市で2009年4月6日、本社ヘリから武市公孝撮影
「サハリン2」の液化天然ガス(LNG)を積んだ専用船=千葉県袖ケ浦市で2009年4月6日、本社ヘリから武市公孝撮影

 英石油大手シェルがロシア・サハリン州の原油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」から撤退すると表明したのに続き、米石油大手エクソンモービルも同じく「サハリン1」から撤退すると発表した。いずれも日本の大手商社などが参画するビッグプロジェクトだが、ロシアへの国際的な批判が強まる中、事業の継続に影響が出る可能性もありそうだ。

 ロシアのウクライナ侵攻が予想外の形で日本に波及したといえるが、サハリン1、2をめぐっては、2000年代後半以降にプーチン政権下のロシア政府とシェルやエクソンが対立を深めたことも、今回の撤退表明の背景にありそうだ。サハリン1、2は欧米の石油大手と日本の商社にとっては、ロシアともめた「いわく付き」のプロジェクトなのだ。

ロシアに奪われた主導権

 サハリン北部では、日本の大手商社などが出資するサハリン1とサハリン2の二つの原油・天然ガス開発が1990年代から進んでいる。筆者は現地を訪れるなど、当時からサハリン1、2を取材してきた。「商慣習が異なるロシアで日本企業が単独で資源開発をするのは不可能だ。経験豊富な欧米の石油大手と組むしかない」という日本側の事情をよく聞いた。

 このうち、シェルが撤退を決めたサハリン2はロシアの国営エネルギー企業ガスプロムが50%、シェルが27.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%の権益を保有している。サハリン2は94年から当時のロイヤル・ダッチ・シェルが主導し、日本の商社も参画する形で開発が進んだ。

 当初、サハリン2は事業主体にロシア側が参加しない「外国投資プロジェクト」として注目されたが、06年にロシア政府が環境問題を主張して開発にストップをかけた。

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経済プレミア編集部

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。