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メタボ健診の無駄遣いは「第2の年金問題」

石蔵文信・大阪大学招へい教授

有効性に疑問も

 俗に「メタボ健診」と呼ばれている「特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準」は2007(平成19)年12月28日に定められ、まもなく8年になろうとしている。国民医療費が増大する中で、生命や生活に深刻な影響があり、高額な医療費がかかる心筋梗塞(こうそく)や脳卒中を未然に防ぐことを目的に、その引き金となる糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病を改善するために行われる健診である。

 この健診は40〜74歳の方が受け、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のリスクがある人の生活習慣を、より望ましいものに変えていくための保健指導を行うという筋書きである。身長・体重・腹囲・血圧・脂質・血糖などを検査し、リスクの高さに応じてレベル別の「動機付け支援」や「積極的支援」と名付けられた保健指導を行い、後に計画どおり効果が出ているかなどを判定する。このうち、動機付け支援は生活習慣改善に…

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大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。