国民の懐を温かく
この20年来、日本経済が混迷から抜け出せない最大の理由は、実質賃金が下がり続け、その間、消費増税も何度かあり、国民の可処分所得が減少してきた結果、国内総生産(GDP)の5、6割を占める消費が伸びないからだ。
アベノミクスは結局、お金持ちをさらに大金持ちにし、強い者をさらに強くしただけ。日本の購買力を支えていた中間層が底抜けし、貧困層が増えて、格差が拡大したのが実態だ。
そこで、以前の「1億総中流社会」の復活を目指すため、国民の可処分所得を増やす、つまり「国民の懐」を温かくする政策が必要となる。その二つの柱が、「減税・給付金」と「ベーシックサービスの充実」だ。
年収1000万円以下の所得税ゼロと給付金
まず、直接的な手法としては「減税・給付金」がある。今はコロナ禍の影響で家計が苦しい世帯もあり、即効性のある支援が必要だ。従って、1年間に限って年収1000万円以下の人の所得税を免除する。非課税の人には応分の給付金を交付する。
そうすると、例えば、年収400万~500万円の人には、10万円の給付金と同じ効果が及ぶ。
しかも、この所得層の大部分を占めるサラリーマンは源泉徴収なので、昨年実施した「一律10万円給付」とは異なり、法改正だけで煩雑な手続きも要らず、手間ひまもかからない。こうした措置でコロナ禍を乗り越えていく。
生きていく上で不可欠な「ベーシックサービス」の充実
さらに、例えば、医療や介護、福祉、それから子育てや教育といったベーシックサービスの分野に予算を重点配分していく。もちろん、これらの政策には独自の政策目的があるが、経済的に見れば、それらの分野に税金を投入することによって、間接的に可処分所得を増やすことにもなる。
時限的な5%の消費減税
そして、コロナ禍が収束し、通常モードになったら、時限的に消費税を5%に減税する。今、コロナ禍で景気が良くないのは、消費税10%が主たる要因ではない。
現状は「跛行(はこう)性」があるというか、「巣籠もり需要」が増えている一方で、飲食業や観光業は壊滅的な打撃を受けている。打撃を受けた人々に消費税を減税してもさほどの効果はない。
また、将来、消費税が5%に下がるとわかると、逆に買い控えも起こる。そこで、当面は「所得税ゼロと給付金」で乗り切って、収まったら、消費減税で消費を喚起する。
財源は富裕層や超大企業の優遇税制の是正で捻出
問題はその財源だ。我々はそれを、特に低所得者層の懐を痛める逆進性のある消費増税に求めるのではなく、富裕層や超大企業への優遇税…
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