民族衣装に使われる伝統的な織物。柄のなかに花の蜜を求めて飛び回るハチドリが描かれている
民族衣装に使われる伝統的な織物。柄のなかに花の蜜を求めて飛び回るハチドリが描かれている

ペルー・クスコ:アンデスの高原にて

 これからの季節、トウモロコシが甘くておいしい時期だ。トウモロコシは中米メキシコが原産だが、ペルーには紀元前1800年ごろにもたらされたといわれている。15世紀にインカ帝国が成立より前の「プレ・インカ」の時代から貴重な食料として栽培され、遺跡にもその跡が残っている。

 キチュア語でトウモロコシを「サラ」という。大きなトウモロコシは「ママサラ」。ママとは大きなもの、あるいは神を指す。インカ時代には、サラは主に食用というよりチチャという酒を造る原料となっていた。チチャは「マジックドリンク」と呼ばれ、宗教的な儀式や祭りになくてはならないものだった。また、先祖から受け継いだ不老長寿の薬としても、ペルー中に広まっていったという。今も地元の人たちの健康ドリンクとして愛飲されている。

 ペルーの都市クスコにある市場でたくさんの種類のサラが売られていた。薬としてどんなふうに使われているのだろうと思い、市場の人たちに聞いてみた。

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エスノ・メディカル・ハーバリスト(民族薬用植物研究家)

さぎもり・ゆうこ 神奈川県生まれ。動物専門学校看護科卒。日本大学英文学科卒。1994年より動物病院で獣医助手として勤務する。同時に海や川の環境保全を行う環境NGOに携わり、海洋環境保全に関するイベントの運営などを行う。また中米のベリーズを訪れ、古代マヤ人の知恵を生かしたナチュラルメディスンに触れ、自然の薬に、より関心を持つようになる。このような体験を会報誌へ執筆する。95年から1年間、東アフリカのケニアにて動物孤児院や、マサイ族の村でツェツェフライコントロールプロジェクトのボランティアに参加する。このときサバンナでは、マサイ族直伝のハーブティーなどを体験する。帰国後は再び環境NGOなどに関わりながら、国内での環境教育レクチャーや、中米グァテマラの動物孤児院にてボランティア活動を行うなど、野生生物と人との共生について探求する。2006年から野生生物の生きる環境や、世界の自然医療の現場を巡る。

生物ジャーナリスト/NATURE's PLANET代表

ふじわら・こういち 秋田県生まれ。日本とオーストラリアの大学・大学院で生物学を学ぶ。現在は、世界中の野生生物の生態や環境問題、さらに各地域の伝統医学に視点をおいて取材を続けている。ガラパゴス自然保護基金(GCFJ)代表。学習院女子大学・特別総合科目「環境問題」講師。日本テレビ「天才!志村どうぶつ園」監修や「動物惑星」ナビゲーター、「世界一受けたい授業」生物先生。NHK「視点論点」「アーカイブス」、TBS「情熱大陸」、テレビ朝日「素敵な宇宙船地球号」などに出演。著書は「きせきのお花畑」(アリス館)、「森の声がきこえますか」(PHP研究所)、「マダガスカルがこわれる」(第29回厚生労働省児童福祉文化財、ポプラ社)、「ヒートアイランドの虫たち」(第47回夏休みの本、あかね書房)、「ちいさな鳥の地球たび」(第45回夏休みの本)、「ガラパゴスに木を植える」(第26回読書感想画中央コンクール指定図書、岩崎書店)、「オーストラリアの花100」(共著、CCCメディアハウス)、「環境破壊図鑑」(ポプラ社)など多数。