お客様の経営とITをデザインして
未来を描き、実現する

フューチャーアーキテクトは、ITを武器に戦略から実装までを担うコンサルティング企業です。
長年培ってきた知見と技術力を強みに最新テクノロジーを駆使して戦略的なシステムを構築し、
お客様のビジネス変革を実現してきました。この特集では、フューチャーアーキテクトが
お客様とともにさまざまな課題に挑んできた事例を全5回にわたって紹介します。

吉田 恵一、森下 淳一、柴田 健一、吉田 仁、上田 裕輝 の写真
CASE STUDY03 日本瓦斯株式会社

「競争」から「共創」へ
“エネルギープラットフォーマー”への道

“エネルギー自由化”が進行する中、ガス販売大手の日本瓦斯(ニチガス)は、ガスだけにとどまらない「総合エネルギー企業」への変革を進めている。そのカギを握るデジタルトランスフォーメーション(DX)への積極的な取り組みを支えたのが、ITコンサルティング大手「フューチャー」(東京都品川区)グループの主要事業会社「フューチャーアーキテクト」だ。両社の「共創」による“エネルギープラットフォーマー”への道を追った。(文中敬称略)

吉田 恵一の顔写真
吉田 恵一
日本瓦斯株式会社
  • 日本瓦斯株式会社
    代表取締役専務執行役員
  • 株式会社エナジー宇宙
    代表取締役社長執行役員

2020年、東京電力グループより日本瓦斯株式会社に転籍し、専務執行役員エネルギー事業本部長に就任。人材発掘・育成プロジェクトなどの新たな取り組みや再エネ普及に向けた制度構築を主導し、海外の官民合同事業の立ち上げを経験する。DXによる保安・充填・配送の効率化と品質向上に精力的に取り組むとともにプラットフォーム事業を推進。エネルギーソリューションの展開ではこれまでの経験と知見、人的ネットワークを活かし、中心的な役割を果たしている。2024年1月より現職。

森下 淳一の顔写真
森下 淳一
株式会社エナジー宇宙
  • 株式会社エナジー宇宙
    常務執行役員

1990年、日本瓦斯株式会社入社。ICTを活用した業務のフルクラウド化や保安高度化などを業界に先駆けて実現。エネルギー事業本部副本部長として、ガスメーターの自動検針デバイス「スペース蛍」の普及拡大やLPガスの新配送システムの構築をけん引するとともに、同社のLPガス配送の効率を上げるための「デポステーション建設」を主導する。2014年に同社常務取締役、2020年に同社常務執行役員エネルギー事業本部副本部長に就任。2024年1月より現職。

柴田 健一の顔写真
柴田 健一
フューチャーアーキテクト株式会社
  • フューチャーアーキテクト株式会社
    パートナー
    Technology Innovation Group

独立系SIerを経て、2006年にフューチャーシステムコンサルティング(現フューチャー)入社。大規模基幹システムの刷新などミッションクリティカルなプロジェクトのアーキテクチャデザインを手掛ける。ビジネス、テクノロジー、人材育成といった観点から、お客様に伴走するコンサルティングを実践。2019年には社会課題を解決し、新しい価値を生み出し続けるDX専門の組織を立ち上げ、エネルギーやメディア、鉄道、製造など幅広い業界のDX推進を支援する。

吉田 仁の顔写真
吉田 仁
フューチャーアーキテクト株式会社
  • フューチャーアーキテクト株式会社
    Technology Innovation Group
    シニアアーキテクト

1999年国内大手SIer入社。政府系金融機関の勘定系システム刷新プロジェクトや大手携帯電話キャリア会社の日次会計システム構築プロジェクト等を経験後、2002年フューチャーシステムコンサルティング(現フューチャー)入社。インフラ・運用設計のスペシャリストとして、大手証券会社の取引システムなど大規模・ミッションクリティカルなシステム設計・開発、サービス運用を多数手掛ける。現在は日本瓦斯株式会社をはじめ幅広い業界のお客様のDX推進を支援する。

上田 裕輝の顔写真
上田 裕輝
フューチャーアーキテクト株式会社
  • フューチャーアーキテクト株式会社
    Technology Innovation Group
    ディレクター

SIerを経て、2007年フューチャーアーキテクト(現フューチャー)入社。流通、小売、製造、教育、エネルギーなど様々な業界にてシステム構築の経験を積み、コンサルティングからシステムデザイン、開発、運用保守まで幅広い実績を持つ。現在はエネルギー業界に向けてDXを推進するEnergy Transformation Unitに所属し、日本瓦斯株式会社の新保安システム構築のプロジェクトをリードする。

システム刷新だけでなく、
「困りごと」を解決

現在、関東エリアを中心に約200万世帯にガス、電気を供給するニチガスは、1955年にLPガス事業からスタートし、1997年のLPガス小売自由化以降、物流改革による低料金化など常に挑戦を続け、エネルギー事業を確立してきた。

2016年に家庭用電力、2017年に家庭用都市ガスの小売りが全面自由化されると、エネルギー業界の競争が一気に激化。ニチガスはさらなる変革を目指して、2018年からIoT(モノのインターネット)によるガスメーターの自動検針デバイスの開発と、データを活用して業務全体の最適化を図るためのプラットフォーム構築に乗り出す。ニチガス専務執行役員の吉田恵一は「自由化に伴う基幹システムの作り直しではなく、これからの変革の動きに対応できる新たなシステムが必要だった」と振り返る。

フューチャーアーキテクトとニチガスの出会いは、東京・町田のガス充填工場のデジタル化の案件にさかのぼる。その後、LPG(液化石油ガス)託送の拠点となる世界最大規模のLPGハブ充填基地「夢の絆・川崎(以下、夢の絆)」のフルデジタル化を手掛け、信頼を深めていったという。

吉田 恵一の写真

「夢の絆」では、一般家庭などの顧客宅に設置された自動検針デバイスから送信される1時間ごとのガス使用量のデータと、配送実績データ、無人配送拠点「デポステーション」のボンベ在庫データからAI解析によって最適な製造計画を算出する。また充填基地の入り口に設置された高性能カメラの画像認証によって配送車両やボンベをリアルタイムに管理し、クラウド上で管理された自動充填・生産システムにより、ボンベの検査から配送先の振り分けまでを無人オペレーションで行う。

森下 淳一の写真

エナジー宇宙常務執行役員の森下淳一は「ボンベの配送計画から逆算して在庫確認と製造を行い、地域ごとに振り分けながら1日何十台ものトレーラーを動かす非常に難しいシステム。これがきれいに組まれていったのには感心した」と話す。ニチガス吉田も「フューチャーアーキテクトのコンサルタントは自分で考えて手を動かし、開発まで行う。実際に工場に足を運んで、コンベヤー上でボンベを振り分けるフラッパーの動きを確認するなど、物理的な仕組みにまで入り込み、『困りごと』を親身になって解決してくれた」と述懐する。

フューチャーアーキテクトパートナーの柴田健一は「実現したいことをシステムで実装するのか、あるいは機械の動きで物理的に行うのかを、工場全体を見ながら徹底的に議論できた。アイデアを出せば実験できるし、チャレンジさせてくれる環境だったので、ワクワクしながら川崎に通っていた」と語る。この「夢の絆」での成功を受け、ニチガス吉田は技術力やスタッフとの連携の良さを高く評価。フューチャーアーキテクトをIT戦略パートナーとして迎え入れ、 “エネルギープラットフォーマー”の実現に向けて、「配送」と「保安」のDX化に着手した。

柴田 健一の写真

技術と経験の“結晶”の配送システム

LPガス事業者にとって、配送業務の効率化は長年の課題だ。LPガスボンベは戸建ての顧客宅の場合、2本設置している。従来は月1回の検針でガスの使用量を予測し、1本目のガスがなくなりそうなタイミングで交換、予備側のボンベは常に満タンの状態にしていた。だが、2本のボンベがほぼ空になるタイミングで同時に交換できれば、配送回数を半減できる。

そこで手掛けたのが、「夢の絆」を起点にした「LPG託送」システムの開発だ。ガスの製造データや消費データ、設備の稼働状況や車両情報などさまざまなデータを「雲の宇宙船」と名付けたクラウドに蓄積し、AI(人工知能)がディープラーニングによって分析・処理するシステム「ニチガスツイン on DL(ディープラーニング)」を2021年3月に構築した。この仮想空間で業務のシミュレーションや最適化の検証を行い、配送を含めた業務の効率化を図るだけでなく、他のガス事業者へ提供することも視野に入れている。

フューチャーアーキテクトシニアアーキテクトの吉田仁をはじめ開発メンバーは、業務への理解を深めるため、実際に配送トラックに乗り、1本約90キロのガスボンベを運ぶといった現場作業を体験した。吉田は「配送業務の大変さと、現場の配送員の方々の『ガスを切らしてはならない』という使命感を肌で感じた。我々もそのためにいいシステムを作らなければと思った。ガスの配送業務には天候や交通渋滞などさまざまなエラー要因がある。無数の条件を組み合わせて最適解を見つけるために、現場の方と一体となって細かいところまで何度も議論した。そういう意味で、このシステムはまさにニチガスの経験とフューチャーの技術の“結晶”」と胸を張る。

吉田 仁の写真

テクノロジーの進化が生んだ新たな保安システム

ガス事業者は顧客に対し、開栓時と緊急時、そして定期的な保安点検が法律で義務づけられている。だが、事業者が共通して利用できる保安システムはない。ニチガスも自社のオペレーションに特化した、法令よりも厳格なシステムを使用しており、他のガス事業者から保安業務を受託する際のネックとなっていた。森下は「点検業務を全国標準に合わせながら、高い保安レベルと使い勝手のよさの両方を実現できるシステムが欲しかった」と話す。

新たに開発した保安点検業務を支援するシステムでは、余計な入力項目を省き、点検項目を柔軟に表示させるなど現場の実情に合わせて工夫を重ねた。フューチャーアーキテクトディレクターの上田裕輝は「現場の負荷を最小限に抑えて生産性を上げるため、使い勝手やメンテナンスのしやすさにはとことんこだわった。ニチガスのデザイナーに画面を作りこんでいただき、使いやすいアプリに仕上げることができた」と話す。2023年12月に利用が始まったが、「点検員の方から『新しいアプリを使ったら点検時間が20%近く削減できた』と聞いた。1件あたり数分の違いでも1日20件以上回るので効果は大きい」と語る。森下も「アプリを使うことで、点検員の作業レベルも標準化できる」と評価する。

上田 裕輝の写真

保安点検は顧客が在宅時に訪問しなければならず、1日数十件を効率的に回るスケジューリングも重要だ。新システムでは最新テクノロジーを駆使して点検タスクと点検員のスケジュールの組み合わせから訪問ルートを最適化し、点検実施数を最大化するエンジンも構築した。森下は「現状、訪問時間の指定は大まかだが、『何時何分ごろに伺います』とピンポイントで指定するなど、お客様にストレスをかけない仕組みも考えていきたい。まだまだ発展途上だ」とさらなる改良を考えている。

キーワードは
「共創」と「シェアリングエコノミーの創造」

ニチガスは2024年1月から、グループ会社を統合して「総合エネルギー小売会社」と「エネルギープラットフォーム会社」、「システム会社」に三分する大再編を実施した。新体制では配送及び保安システムを自社のみならずグループ外へ展開することを強化していくという。

ニチガスの吉田は「キーワードは『共創』と『シェアリングエコノミーの創造』。人手不足や高齢化、配送に影響する『2024年問題』といった業界全体の課題を、このシステムを汎用(はんよう)化することで解決できるのではないか」と期待する。

森下は「システムをシェアし、運用やメンテナンスも皆で負担する『共創・共有』が我々のコンセプト。賛同してくれる企業も多数いるので、業界全体として進めていきたい」と先を見据える。

フューチャーアーキテクトの吉田は「エネルギーインフラを支える現場を担う人々のノウハウを注入し、日々更新されるデータを使って改善を続けている。まさに『共創』に貢献するシステムになった」と話す。

上田は「保安システムは稼動したばかりだが、社会課題解決に向けて現場の負荷をいかに減らすかを考え抜いた。さらに改良し、より広く導入してもらうことで業界全体に貢献したい」と意欲を見せる。

柴田は「今回のプロジェクトは、基幹システムの刷新というより、業界の誰もが共有できる新しい“仕組み”を考え、作り続けていくという感覚。実証にとどまらず『実装』を前提に、失敗しても必ず次につなげるというニチガスの姿勢に学ばせてもらった」と振り返る。

“競争”から“共創”へ。自社だけでなく業界全体、そして社会課題を解決するために、ニチガスとフューチャーアーキテクトは、さまざまな人々と手を取り合いながら、“エネルギープラットフォーマー”への道を進んでいく。

吉田 恵一、森下 淳一、柴田 健一、吉田 仁、上田 裕輝 が並んで座って対談している様子
CLIENT INFORMATION
会社名
日本瓦斯株式会社(NIPPON GAS CO.,LTD.)
代表取締役社長執行役員
柏谷 邦彦
設立
昭和30年7月29日
従業員数
1,743名(連結) ※2023年4月1日時点
URL
https://www.nichigas.co.jp/
会社名
フューチャーアーキテクト株式会社
代表取締役社長
谷口 友彦
設立
2016年4月1日
(フューチャー株式会社より
ITコンサルティング事業を継承)
従業員数
連結:2,948名 (2023年12月末現在)
URL
https://www.future.co.jp/architect/