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低所得の人はなぜ「不健康な要介護者」になるのか

近藤克則・千葉大学予防医学センター教授

 認知症、うつ、転倒から腰・膝痛、高血圧や糖尿病まで、さまざまな疾患や不健康状態が少ない集団やまちに比べて、2倍も多い場所がある。そんな「健康格差」の研究を私が始めて20年になる。さる7月、この20年を振り返り、今後を考えるシンポジウムが開かれた。

 1999年度に、愛知県のあるまちで調査したところ、要介護認定者が低所得者では高所得者の約5倍も多いと出て驚いた。「要介護高齢者は低所得者層になぜ多いか――介護予防政策への示唆」という論文を2000年に公表した。

 留学先の英国では政府が対応を始めていた。基本的人権にも関わるからだ。日本社会も対策すべきだと思った。が、当時の日本には「格差のない社会はない」と叫ぶ首相がいた。日本に無視できない健康格差があることを示すデータすらなかった。「平等幻想」がまだ残っていて、調査で所得を尋ねること自体がはばかられていた。

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千葉大学予防医学センター教授

1983年千葉大学医学部卒業。東大医学部付属病院リハビリテーション部医員、船橋二和(ふたわ)病院リハビリテーション科科長などを経て日本福祉大学教授を務め、2014年4月から千葉大学予防医学センター教授。2016年4月から国立長寿医療研究センター老年学評価研究部長。「健康格差社会ー何が心と健康を蝕むのか」(医学書院2005)で社会政策学会賞(奨励賞)を受賞。健康格差研究の国内第一人者。