認知症、うつ、転倒から腰・膝痛、高血圧や糖尿病まで、さまざまな疾患や不健康状態が少ない集団やまちに比べて、2倍も多い場所がある。そんな「健康格差」の研究を私が始めて20年になる。さる7月、この20年を振り返り、今後を考えるシンポジウムが開かれた。
1999年度に、愛知県のあるまちで調査したところ、要介護認定者が低所得者では高所得者の約5倍も多いと出て驚いた。「要介護高齢者は低所得者層になぜ多いか――介護予防政策への示唆」という論文を2000年に公表した。
留学先の英国では政府が対応を始めていた。基本的人権にも関わるからだ。日本社会も対策すべきだと思った。が、当時の日本には「格差のない社会はない」と叫ぶ首相がいた。日本に無視できない健康格差があることを示すデータすらなかった。「平等幻想」がまだ残っていて、調査で所得を尋ねること自体がはばかられていた。
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