新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が進む中、4月15日に投開票された韓国総選挙(定数300)で有権者は、政権を強くすることを選択した。進歩系与党「共に民主党」と系列の比例政党「共に市民党」が合わせて半数を大きく超える180議席を獲得し、巨大な与党勢力が誕生したのだ。
1期5年の大統領選の韓国で、文在寅(ムン・ジェイン)政権の任期は残り2年。昨年秋の検察改革を巡る検察当局とのあつれきでレームダック(死に体)化が始まったとみられていたが、再び求心力を得たことになる。ただし、大統領選が近づくと、与党と政権との間で主導権争いが起きるのが常。この安定が政権の最後まで続くとは限らない。実際、政府・与党は、勝利の余韻に浸るどころか、緊張感に包まれている。なぜなのか--。
巨大与党が思い起こす「2004年の教訓」
投開票から2日後の4月17日午前、与党系2党の選挙対策委員会幹部が一堂に会し「合同解散式」を開いた。幹部らに浮かれた表情もガッツポーズもない。カメラを向けられると「国民に感謝します」と、一列に並んで深々と頭を下げた。
共に民主党の李海瓉(イ・ヘチャン)代表は「予想以上に国民の支持を受けた。コロナ国難の克服と経済危機の早期安定が急務だ」と、国民の不安に応えることが最優先という認識を強調した。また、2004年の総選挙で当時の進歩系与党「開かれたウリ党」が過半数を得たものの、暴走して政権支持率を急落させた経験を振り返り、「ウリ党が経験した苦痛を(忘れずに)反省しなければならない。深く考えて国会運営をしてほしい」と諭すように語った。共に市民党代表が与党圧勝を受け「(北朝鮮を支援する行動を取り締まる)国家保安法の撤廃も可能ではないか」と発言したことを念頭に、暴走するなとくぎを刺したものとみられる。
李代表が言う04年の教訓とは、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権後半に政府・与党が…
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