若い才能が開花 将来にはばたく「未来の巨匠コンサート」

Bunkamuraが主催するオフィシャルサプライヤースペシャル「未来の巨匠コンサート」は、若手音楽家に演奏の機会を提供し、次世代を育成する活動だ。Bunkamuraの活動を支えるオフィシャルサプライヤーの支援のもとで実施され、気鋭のアーティストが大舞台に臨む。東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールで9月7日に開かれた「未来の巨匠コンサート2025」ではトランペット奏者の松井秀太郎さんとチェロ奏者の鳥羽咲音さんが、情熱にあふれる演奏を披露した。
日ごろから「トランペットで“歌うこと”を大切にしている」という松井さん。ステージでは、アルメニア民謡の旋律とリズムを取り入れたアルチュニアンのトランペット協奏曲を伸びやかに演奏した。
クラシック、ジャズ、ポップスなどジャンルを越えて独自の音楽を追求する松井さんだが、自身にとってこの曲は「歌いやすく、大好きな曲」。特にカデンツァ(楽章最後のソリストの独演の部分)には、その場で音をつくる即興的な要素が色濃く表れた。

鳥羽さんは、魂を込めるように、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲を奏でた。
4つの楽章で構成され、3楽章に長大なカデンツァを独立させた難解な曲。鳥羽さんは、チェロの巨匠、ミッシャ・マイスキーさんが髪を振り乱しながらこの曲を演奏する姿に「子どもの頃から憧れていた」という。
旧ソ連で名をはせたショスタコーヴィチが1959年に作曲した。当時は、スターリン死後、一時的に検閲などが緩和された「雪解けの時代」だ。それでもなお、「政治的背景の重苦しさや、それに対するショスタコーヴィチの心情がにじみ出ているように感じた」という鳥羽さんは、そうした自由や抵抗の精神を引き出すように力強く、しなやかに弾いた。
ホストは、Bunkamuraのフランチャイズオーケストラである東京フィルハーモニー交響楽団と指揮者のキンボー・イシイさん。長くドイツを拠点にしてきたキンボーさんは近年、日本国内でも精力的に活動している。今回のコンサートでは若きソリストとオーケストラによる抜群のコンビネーションを導き、ホールは温かな拍手に包まれた。
観客からは「2人とも曲の選び方、演奏とも個性が光っていた。自分の訴えたいことを音楽で表現しようとしていた。クラシック界に新しい風をもたらすのではないか」「いずれも現代的で初々しかった。キンボーさんはソリストの若々しい演奏とオーケストラを上手につないでいた」などの感想が聞かれた。
「未来の巨匠コンサート」は、「文化・芸術の新たな担い手の発掘」の一環として、Bunkamura開業から3年後の1992年に始動した。
海外の伝統ある国際音楽コンクールの事務局や音楽学校と連携し、オフィシャルサプライヤーのサポートにより、国内外の注目の音楽家に日本での演奏の場をつくる「Bunkamuraオーチャードホールアワード」を実施。そのアワードの受賞者を対象にしたのが「未来の巨匠コンサート」で、歴代の受賞者には現ベルリン・フィル首席フルート奏者、エマニュエル・パユさん、日本を代表するヴァイオリニストの一人、戸田弥生さん、クラリネットの世界的名手、シャロン・カムさん、天才チェリストと称されたタチアナ・ヴァシリエヴァさん、オペラ歌手のマルクス・ヴェルバさんら、第一線で活躍するアーティストが名を連ねる。
未来の巨匠コンサートは2000年でいったん幕を閉じることになったが、四半世紀を経た23年、これからの活躍が期待される国内の若手演奏家に飛躍のチャンスを提供するため、装いを新たに再スタートした。
この年の11月、オーチャードホールの舞台に立ったのは、海外のジュニアコンクールで優勝するなど頭角を現してきたヴァイオリニストの村田夏帆さんと、ジュネーブ国際音楽コンクールで3位に入賞したピアニストの五十嵐薫子さん。2人はそれぞれ、東京フィルハーモニー交響楽団と首席指揮者のアンドレア・バッティストーニさんとのコンチェルト(協奏曲)の共演に挑み、オーケストラと堂々と渡り合う姿に観客らは目を見張った。

昨年は10月13日に行われ、東京フィルと指揮者の大友直人さんをホストに、ヴァイオリニストの登竜門と呼ばれるユーディ・メニューイン国際コンクールジュニア部門で優勝に輝いた若尾圭良さんとピアニストの奥井紫麻さんが登場した。
奥井さんはロシアに留学して才能を育み、13歳のときオーチャードホールでデビュー。同ホールでの演奏は7年ぶり。自分でも「確かな成長を感じることができた」という。

23年に出演したピアニストの五十嵐薫子さんは、前年のジュネーブ国際音楽コンクールで3位に入賞した期待の星。コンサートでは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を軽やかなタッチで弾いた。
「出演が決まったときは、あこがれのホールで演奏できることを光栄に思い、その日にできる最高の『皇帝』を弾こうと決めた」と振り返る。共演した東京フィルのメンバーは、練習時に「よりよく弾くにはどうしたらいいか」と親身になってアドバイスをしてくれ、「マエストロ(首席指揮者のアンドレア・バッティストーニさん)も温かい人柄。演奏会の当日は観客のみなさんの応援を感じ、全体的にアット・ホームな雰囲気でした」。
今年3月、東京とソウルで行われた日韓国交正常化60周年記念の特別演奏会に出演し、同公演でも東京フィルと共演するなど、五十嵐さんは確実にキャリアを重ねている。
「私にとって『未来の巨匠コンサート』は、大きなチャンスと多くの出会いをもたらしてくれた貴重な存在」と話した。

「未来の巨匠コンサート」は無料招待制(応募多数の場合は抽選)だが、Bunkamuraでは「若いアーティストをさらに強く応援したい」という人のための有料の「パトロネージュチケット」を枚数限定で販売している。公演の座席(1階中ほどの中央寄り)を確保するほか、演奏終了後、出演者らを交えたパーティーに参加できるなどの特典がある。
近年、アジアの若手演奏家が実力を伸ばし、日本人もショパンピアノ国際コンクール(ポーランド)、エリザベート王妃国際音楽コンクール(ベルギー)など、海外の伝統あるコンクールに次々と入賞している。「未来の巨匠コンサート」には老舗コンクールの入賞者も出演しており、大ホールでの演奏会は次のステップという意味でも音楽界に存在感を示すことになるだろう。
Bunkamura公演担当で音楽・舞踊制作部の上野山晴之さんは「リニューアル後、3回のコンサートが開かれた。これからも若い才能の発掘と育成に一層の力を入れるとともに、多くのみなさんにクラシック音楽を聴いていただき、裾野を広げていきたい」と語る。

若き才能ある音楽家を発見・支援し、交流と演奏機会の提供を行うコンサート。
詳細はこちら才能が芽吹く、未来へのステージ







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