第67回毎日芸術賞 鄭義信さん 演劇・邦舞・演芸部門受賞

Bunkamura Production 2025『泣くロミオと怒るジュリエット2025』の作・演出をつとめた劇作家・演出家の鄭義信(ちょん・うぃしん)さんが、第67回毎日芸術賞(演劇・邦舞・演芸部門)を受賞した。シェイクスピアの名作を大胆に再解釈した業績などが高く評価された。
鄭さんは「僕ひとりの力というよりも、スタッフやキャストたちの力のたまもの」と感謝。2月に東京都内であった贈賞式には、Bunkamura関係者や出演俳優たちも大勢駆けつけ受賞を祝った。
毎日芸術賞は、演劇、音楽、美術、文学など幅広い芸術分野を対象に、優れた業績を挙げた個人・団体を顕彰する賞。1959年に創設され、創作の第一線で活躍する表現者たちを60年以上にわたり広く社会に紹介してきた。
演劇・邦舞・演芸部門ではこれまでに片岡仁左衛門さん、井上ひさしさん、市村正親さん、大竹しのぶさんら日本を代表する俳優、劇作家らが受賞している。
今回、受賞対象作になったのは、『泣くロミオと怒るジュリエット2025』、『焼肉ドラゴン』(新国立劇場)、『白い輪、あるいは祈り』(東京演劇アンサンブル)の三つの舞台。いずれも再演作品ながら、多彩な題材・表現を通して現代を深部まで照射し、鄭さんの40年以上にわたる長いキャリアに裏打ちされた優れた舞台だった。

なかでも、『泣くロミオと怒るジュリエット2025』は、古典であるシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を、出演者は全員男性に、せりふは全編関西弁に大胆に翻案。原作の悲劇の背景にある差別や社会的分断の構造に着目し、現代日本にも地続きの「ロミジュリ」を作り上げた。

吃音症に悩む不器用なロミオ役の桐山照史さん(WEST.)、芯が強く感情を率直にぶつけるジュリエット役の柄本時生さんはもとより、渡辺いっけいさんや八嶋智人さんをはじめ実力豊かなキャスト陣が躍動。貧しい工場町を舞台に、二つの愚連隊の因縁を背負った若い恋人たちが暴力や分断の構造と激しく衝突していく様を鮮烈に描いた。

2020年の初演はコロナ禍のため公演中止を余儀なくされたものの、5年の時を経て昨年7~8月、東京はTHEATER MILANO-Zaで、大阪は森ノ宮ピロティホールで再び上演が実現した。鄭さんは「再演がかなって(大阪公演の大千秋楽まで)完走できました」と感慨深げ。初演時は若い女性の観客が目立ったが「再演では年齢層が少し上がり、男性のお客様も増えたようです。『初演を見られず、ぜひ見たかった』という方も多くいらっしゃいました」と喜んだ。

携わったBunkamuraプロデューサーの加藤真規さんは「『泣くロミオと怒るジュリエット』は、Bunkamuraが初めて鄭さんとご一緒した企画でした。最初にお会いした時、シアターコクーンという劇場をイメージして新しい作品を書いてもらえませんか、とお願いしたことを思い出します」と振り返る。
「男ばかりの稽古場はまるで男子校の部活のような活気に満ち溢れていました」とも。「初演がスタートしてほどなく新型コロナウイルスで公演中止となってしまいましたが、出来映えは素晴らしく、お客さんからの評価も高かった。以来、鄭さんから再演はしないのかと言われ続けていました」
だからこそ、喜びもひとしおだ。「念願の再演でした。しかもこのような賞を受賞するなんて!鄭さんおめでとうございます!」
そして毎日芸術賞受賞へとつながったこの作品が、鄭さんの創作の新たな章を開くのかもしれない。これから生まれる物語にも、期待は高まるばかりだ。
鄭義信さん プロフィール
1957年、兵庫県生まれ。代表作に「ザ・寺山」(岸田國士戯曲賞)、「焼肉ドラゴン」(鶴屋南北戯曲賞)、「パーマ屋スミレ」など。Bunkamuraでは舞台「パラサイト」も手がけている。また、「月はどっちに出ている」(毎日映画コンクール脚本賞)といった映画脚本も執筆。映画「焼肉ドラゴン」では監督も務めた。
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