PR 安藤ハザマ

ネパール初のトンネル開通へ 困難を越えて切り開いた「道」と未来

完成したナグドゥンガトンネル東坑口(安藤ハザマ提供)
完成したナグドゥンガトンネル東坑口(安藤ハザマ提供)

 険しい山々に囲まれるネパール。交通渋滞や事故の解消につながるトンネル建設が長年待ち望まれてきたが、地形や地質の特徴から難しいとされてきた。だが、今年7月にネパール初のトンネル「ナグドゥンガトンネル」(全長約2.7キロ)が開通する。さまざまな困難を乗り越えて完成した、首都カトマンズと主要都市を結ぶトンネル。工事を担ったのは、大手建設会社「安藤ハザマ」(本社・東京都)だ。日本の高い技術力とものづくりへの情熱が結実したトンネルが、ネパールの新たな未来を切り開く。

慢性渋滞と事故多発 待ち望まれたトンネル建設

 ネパールでは近年、経済成長に伴い物流や人の往来が拡大する一方で、道路ネットワークの整備が追いつかず、慢性的な交通渋滞が発生していた。さらに雨期になると、道路の斜面が崩落し、バスが土砂に埋もれて多くの犠牲者が出るなどの重大事故も発生。交通安全の課題は深刻さを増していた。

 こうした背景のもと、首都カトマンズと主要都市を結ぶナグドゥンガ峠にトンネルを建設するプロジェクトが始動。2019年に着工し、7年の歳月をかけてトンネル建設に取り組んだ。

 ナグドゥンガ峠を通過するには、通常30分から1時間ほどかかるが、トンネルができると通過にかかる時間は5~6分程度に短縮されるとみられる。

 渋滞の解消につながるだけでなく、トンネルは土砂崩れや地震の影響を受けにくく安全性も高い。雨や地震の時でも安心して車が通行できるインフラが整うことは現地の人たちの命を守ることにも直結する。

 大きな期待を集めるトンネル建設だが、予想をはるかに超える難工事となった。「世界一(トンネル工事が)難しい」とされる日本のトンネル建設の現場で技術を磨いてきた安藤ハザマの井上賢一さんでさえ、対応に頭を抱えるほどだった。

ヒマラヤの壁を越えた、日本の技術と現場の挑戦

 ネパールには、8000メートル級の山々が連なるヒマラヤ山脈がある。大陸プレート同士が押し合うことで地圧が高まり、険しい山々が形成されている。

 地圧が高く、さらに岩盤が柔らかくて崩れやすいという特性により、トンネル工事は難航。強い地圧によってトンネル内に亀裂が広がって大きく変形したり、地層の表面が剥がれて落盤につながったりしたからだ。

 日本にも似た地質はあるものの、変形したとしても通常数十センチ程度にとどまる。一方、今回のトンネル工事は地圧の大きさと岩盤の脆さが重なり、最大で約1.5メートルにも及ぶ大規模な変形が発生した。トンネル内部を支えるために大型の鉄骨材を用いたものの、その鉄骨でさえ曲がったり、破損したりするほどの力が加わったという。

崩落したトンネル内(安藤ハザマ提供)
崩落したトンネル内(安藤ハザマ提供)

 掘削中は40回以上の落盤があり、掘り進めるほどに横方向からの圧力でトンネルの幅が保てなくなる場面もあった。車両通行に必要な空間を確保するため、何度も掘り直しを余儀なくされた。

貫通まであと少しで崩落 困難も打ち破る現地スタッフと育んだ絆

 さらに、作業体制も大きな課題だった。日本では5人ほどのチームで柔軟に役割を分担するのに対し、ネパールでは担当が固定されており、その人物がいなければ作業が止まってしまうことも。情報共有や連携も十分とは言えず、当初は苦労が続いた。

作業員への安全教育(安藤ハザマ提供)
作業員への安全教育(安藤ハザマ提供)

 そうした中でも、トンネル工事の現場所長を務めた井上さんは、現地スタッフと試行錯誤を重ね、日本の技術を伝えながら人材育成にも取り組んだ。

 特に重要だったのが、地盤の動きを把握する計測作業だ。ネパール人スタッフが計測し、トレーニングを重ねる中で計測の精度は大きく向上。微細な変化も捉えられるようになった。わずかな動きを見逃さず、コツコツと日々の計測を積み重ねたことで、トラブルの原因分析や対策の検討に大きく寄与したという。

 しかし、試練は続く。トンネルが貫通するまで残り数十メートルという地点で、大規模な崩落が起きたのだ。

 「あと数十メートルで貫通というタイミングで、大きな落盤が起きました。これまでで最も大きな崩落と変形で、完成が目前だっただけに精神的なショックも非常に大きかったです」と井上さん。

ナグドゥンガトンネルの貫通式(安藤ハザマ提供)
ナグドゥンガトンネルの貫通式(安藤ハザマ提供)

 ネパール特有の困難さを突きつけられる出来事に一時は絶望したが、知恵を結集し、試行錯誤を重ねながら前進を続け、最終的にトンネルは無事に貫通した。

「一人では折れていた」 支えた多国籍チームの力

 「落盤や(トンネルの)変形が大きかったところをもう一度掘り直すことを繰り返してきたので、工期はほぼ倍近くに延びてしまいました。最後の段階でも、本当に貫通できるのかという状況が続いていたので、ようやく終わった時はホッとしました」。 貫通した時の心境をそう振り返る。

集合した作業員(安藤ハザマ提供)
集合した作業員(安藤ハザマ提供)

 困難に直面した際、「どうしよう」と立ち止まるのではなく、「こういう方法はどうか」といったアイデアが自然と現場から生まれ、課題解決につながる場面も多かったという。

 「みんなのおかげで乗り越えられた。一人だったら心が折れていたと思います」。井上さんの言葉に力がこもった。

常識が覆る現場 「日本が一番難しいとは限らない」

 さらに、今回の経験は、「日本の地質条件が世界一難しい」という認識にも変化をもたらした。

完成したナグドゥンガトンネル西坑口(安藤ハザマ提供)
完成したナグドゥンガトンネル西坑口(安藤ハザマ提供)

 井上さんは「日本では多様で複雑な地質の中で、これまでに1万本以上の道路トンネルを掘ってきました。そうした経験や実績に裏打ちされた技術があり、厳しい条件下で工事を行ってきたことから、日本の技術は世界一だと考える人も多く、私もその一人でした。でも、ネパールでトンネルを掘り、日本の地質条件が世界で最も難しいというわけではなかったのだと実感しました。国内だけで仕事をしていると、そうしたことにはなかなか気づけません。海外に出て行くことで発見があり、自分が成長する機会にもつながっていきます」と語る。

 異なる環境に身を置いたからこそ得られた気づきが、長年の常識を見直すきっかけとなったという。

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海外でこそ得られる成長 広がる視野と可能性

 同社は、ODA(政府開発援助)関連事業や日系メーカーの工場建設を中心に海外展開を推進。ネパールをはじめ世界14拠点で事業を展開している。

 国内で基礎知識を身につけた上で海外業務に挑む体制を整えており、海外赴任は30代以降で任されるケースが多い。言語や文化、法規制など、日本とは異なる環境に直面するが、現地スタッフと協働しながらプロジェクトを進める経験は大きなやりがいとなり、技術者としての成長を後押ししている。

 また、各拠点が孤立しないよう、日本とのリアルタイムな情報共有や打ち合わせを可能にする体制を構築。国内外が一体となったチームとしてプロジェクトを推進している点も特徴だ。

 今後は、ODA対象国の変化を見据えた新たな市場への進出に加え、M&Aなども活用しながら、現地に根ざした事業基盤の強化を図る。グローバルでの存在感をさらに高めていく考えだ。

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「一度海外にて挑戦を」

安藤ハザマ ナグドゥンガトンネル現場所長の井上賢一さん(2026年5月23日) 拡大
安藤ハザマ ナグドゥンガトンネル現場所長の井上賢一さん(2026年5月23日)

 険しい山を登った先に絶景が広がるように、困難な挑戦の先には新たな視野が開ける。 井上さんは、これからの未来を担う若い世代にこう呼びかける。

 「異なる経験を持つ人たちが集まり、知恵を出し合うことは、新しい気づきや成長につながります。特に若い人には、一度海外に出て挑戦してみてほしい。抵抗があるかもしれませんが、行ってみると意外と面白いものです。人生にとって大きな経験になると思います」

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