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(1)絲山秋子『まっとうな人生』(河出書房新社)
(2)左川ちか著、島田龍編『左川ちか全集』(書肆侃侃房)
(3)鯨庭『言葉の獣』1巻(リイド社)
生きるために必要なもの
ヴァージニア・ウルフが「女性と小説」の題目で講演を行ってから百年近い。女性が「自分自身」として生きるために何が必要か、豊かな迂回(うかい)を重ねつつ示したウルフの背中を、多彩な創作に見る。
(1)は二〇〇五年刊『逃亡くそたわけ』で、精神科病院からの逃避行を企てた「花ちゃん」と「なごやん」の再会を描く。舞台は富山だ。一九年からの二年半を書く今作では、それぞれに家庭をもった二人の生活へ感染症の蔓延(まんえん)が影をおとす。いまも双極性障害を抱えながら暮らす「花ちゃん」が、まっとうに生きることについて自問するとき、この物語が書きつがれたように、自分もこの十数年を地続きで生きてきたのだと実…
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