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沖縄に新たな負担を求める計画にもかかわらず、住民への配慮が足りなかったのではないか。撤回したのは当然の判断だ。
陸上自衛隊が沖縄県うるま市のゴルフ場跡地に訓練場を新設する計画である。木原稔防衛相が今月、断念を表明した。異例の対応だ。
那覇市に拠点を置く陸自第15旅団を師団に格上げするため、新たな訓練場を必要としていた。軍事行動を活発化させる中国を念頭に、政府が進める南西諸島における自衛隊強化の一環だ。
警戒警備や宿営、夜間偵察などの訓練をする予定だった。だが、住宅街や教育施設に近く、地元からは事故リスクや騒音に対する懸念の声が上がっていた。
反対運動の広がりを受けて3月に、うるま市の中村正人市長が防衛省に計画を断念するよう要請した。県議会や市議会も撤回を求める意見書を可決した。計画は公表からわずか4カ月で、撤回に追い込まれた。
一連の経緯で浮き彫りになったのは、住民との対話をないがしろにする防衛省の姿勢だ。
政府がうるま市に計画を説明したのは、用地取得費を計上した2024年度予算案が決まった昨年12月下旬だ。住民への説明はさらに遅れ、今年2月だった。玉城デニー知事は「防衛省が計画を隠密裏に進めているところに、非常に不信感が強い」と批判した。
防衛省は20年にも、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の秋田、山口両県への配備を取りやめている。地元への説明がずさんで、住民の反発を招いた。
その後、防衛省は、自衛隊施設の整備を予定する地域との関係を強化するため組織を再編したが、機能しているようには見えない。
とりわけ米軍基地が集中する沖縄では、政府に対する不信感が根強い。普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画を、政府が県民の声に耳を傾けず強引に進めていることへの反発も大きい。
自衛隊の体制強化にあたっては、対象となる地域との信頼醸成が欠かせない。
情報は可能な限り迅速に開示し、説明を尽くす。防衛省には、地元との向き合い方を抜本的に見直すことが求められる。