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子どもたちに向けた童話です。大人が読み聞かせ、お互いの心を通わせましょう。

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卓とじいちゃんとマグノリア/1

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卓とじいちゃんとマグノリア 1

 <広げよう おはなしの輪>

ぶん 中川なかがわなをみ  こしだミカ

 学校がっこうからバスどおりをじゅっぷんぐらいあるいてみぎがると、そこからのぼざかになっていて、つきあたりにじいちゃんのいえがあります。くろいかわら屋根やねふるいえです。

 たくはきょうも、さかした深呼吸しんこきゅうしました。

 「くぞ」

 たくはゆっくりと、坂道さかみちをのぼりはじめました。

 半分はんぶんのぼりましたが、まだ息苦いきぐるしくありません。喘息ぜんそく大丈夫だいじょうぶです。

 幼稚園ようちえんのころ、かあさんと一緒いっしょにこのさかをあがったときのことをおぼえています。途中とちゅう何度なんどまったものです。いきをつぐとゼイゼイいって、どんなにくるしかったかわかりません。

 とうさんとかあさんが中国ちゅうごくってから、ひとつきがたちました。とうさんの転勤てんきんに、かあさんがついてくことになったのです。

 たくちいさいときから気管支きかんしよわくて、喘息ぜんそく発作ほっさをおこして入院にゅういんしたこともあります。ですから、外国がいこくくのは心配しんぱいでした。家族かぞく何度なんどはなって、たくはじいちゃんのいえですごすことになりました。

 じいちゃんのいえやまなかで、空気くうきがよくて野菜やさい新鮮しんせんなものがべられます。喘息ぜんそくがあるたく生活せいかつするのには、とてもいい場所ばしょです。

 たくは、冬休ふゆやすみや夏休なつやすみになると、よく、じいちゃんのいえにきていましたから、じいちゃんと一緒いっしょ生活せいかつにはなれていました。

 でも、今度こんどは、いままでとはちがいます。とうさんたちは中国ちゅうごくにいて、いたくなっても、すぐにうことはできません。

 たくねんせい始業式しぎょうしきむら小学校しょうがっこうでむかえてひとつきがたちました。

 さかをのぼりきると、じいちゃんのいえがあります。おおきないえなかはどこもうすぐらくて、部屋へやがたくさんありました。じいちゃんの部屋へやには、んだばあちゃんの写真しゃしんかべにかかっています。まるかおのやさしそうなひとでした。

 じいちゃんはばあちゃんがんでから、ひとりでんでいます。

 さかは、きょうもやすまないでのぼれました。

 にわにじいちゃんがいます。たくがここにきてから毎日まいにち、じいちゃんはにわにでて、学校がっこうからかえってくるたくっていてくれました。

 「どや、きょうはどないもなかったか?」

 「うん。大丈夫だいじょうぶだった」

 じいちゃんはたく喘息ぜんそく心配しんぱいしています。


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