愛知県弥富市の市立中3年の男子生徒が、校内で腹部を刺されて死亡した。同学年の男子生徒が現行犯逮捕され、殺人容疑で送検された。
登校直後に起きた衝撃的な事件だ。現在は別のクラスだが、同じ小学校に通い、中学2年時は一緒のクラスだった。
2人の間に何があったのか、なぜ、こうした事態に至ってしまったのか。細心の注意を払いつつ、経緯を解明する必要がある。
逮捕された生徒は始業前に、被害生徒を廊下に呼び出していた。凶器の包丁はインターネットを通じて購入し、かばんに入れて登校したという。
捜査で明らかになってきた状況からは、計画性がうかがわれる。調べに「嫌がらせをされた」と供述している。
ただし、14歳の少年である。自分の意思や行動を正確に説明できるとは限らない。慎重な捜査が求められる。
経緯の解明には、学校や市教育委員会による徹底した調査も必要である。
校長は記者会見で、2人の間のトラブルについて「思い当たるところがない」と説明している。いじめの有無を問う市教委のアンケートには、2人に関する記載はなかったという。
今後、弁護士や医師らで構成する第三者委員会も設置される。事件の予兆はなかったのか、防ぐ手立てはなかったか、検証しなければならない。
被害生徒は刺された後、自分の教室に戻って倒れたという。教室内には当時、クラスのほとんどの生徒がいた。
目撃した生徒たちが大きなショックを受けたことは、想像に難くない。心のケアが不可欠だ。高校受験を控えた時期でもある。
全校生徒が138人と、それほど規模が大きい中学校ではない。居合わせなかった生徒も含め、カウンセリングをはじめとした支援体制を、教育委員会などは整えるべきだ。
子どもが子どもによって命を奪われるという悲劇を、繰り返してはならない。
学校と家庭、社会が連携しながら、命を大切にするための教育を粘り強く進める必要がある。