連載

待ったなし

毎日新聞デジタルの「待ったなし」ページです。最新のニュース、記事をまとめています。

連載一覧

待ったなし

土俵で目立つ「白い物」 負傷、けが予防で増えるサポーター力士

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
照ノ富士(左)が寄り切りで御嶽海を降す=東京・両国国技館で2022年5月22日、三浦研吾撮影
照ノ富士(左)が寄り切りで御嶽海を降す=東京・両国国技館で2022年5月22日、三浦研吾撮影

 いまさらだが大相撲が過酷な格闘技であることは言うまでもないだろう。増える力士の体重は5月場所前の幕内平均で157・3キロ。立ち合いで150キロの力士が相手にぶつかる時の衝撃は1トン近く、2人がぶつかり合えば2トンにもなるという説もある。引退した横綱が「毎日が軽トラック同士の衝突だった」と現役時代を振り返っている。

 そのうえ安易に差しにいくと思い切り小手に振られて肘を痛める。押され方や倒れ方が悪いと膝に負担がかかる。けがが増えていることを如実に表しているのが、サポーターを装着する力士の多さだ。

横綱土俵入りでも両膝を保護

 あちこちにサポーターをして土俵に上がる力士を角界では否定的に「『白い物』が目立つ」と言ってきた。いま「白い物」を身につけていない力士はほとんどいない。5月場所の千秋楽でみると、幕内力士では琴ノ若や王鵬らの若手は目立たないが、それでも手首や足首にテーピングをしていた。栃ノ心、碧山、隠岐の海らベテランと呼ばれる力士の土俵は、膝や肘のサポーターが大きくなる。

 象徴的なのが遠藤だ。相撲のうまさに加え寡黙さを保ち、サポーターをしないことでも好感を持たれているが、いまは両膝と右肘に大きなサポーターをしての土俵だ。力士生活10年目の31歳。「さすがの遠藤も経年劣化だな」と中堅の親方が苦笑した。

 30歳の照ノ富士は取組では両肘、両膝の大きなサポーター姿が常態となっている。ほとんどの横綱は土俵入りでは「白い物」を外すが、照ノ富士は上半身のサポーターは外しても両膝はがっちりと固めている。土俵に上がるだけで負担がかかるのだろう。古い話だが、元横綱・隆の里は「相手に弱みを見せるようなものだ。そこを攻められるだろう」とサポーターを身につけなかった。親方時代も弟子の稀勢の里らにもよほどのことがない限り許さなかった。

 相撲規則では「締込(しめこみ=まわし)以外を身につけてはならない。負傷者の包帯、サポーター、白足袋などは認められるが……金属類は禁止」である。最近はかなり精巧なカーボン製の膝を固めるサポーターもみられる。負傷箇所の保護とともに予防的な意味も強くなった。マウスピースをしている力士もいる。

2トンの衝撃で首痛に悩む力士も

 頭から当たっての首のけがも多くなっているが、首の負傷にはサポーターなどができないから厄介だ。大関・貴景勝の最近の不振もそこにあるという見方もある。素早い取り口の小兵、石浦は3月場所途中で頸椎(けいつい)を痛めて途中休場。5月場所も出場できず、名古屋での7月場所の番付では十両下位に陥落してしまった。

 新型コロナウイルスの感染防止で観客数を制限した最近の本場所は力士同士が頭からぶつかる「ゴツン」という鈍い音が響いて、改めて大相撲の立ち合いの厳しさが伝わっている。その苛烈さがファンを喜ばせ、また勝負の行方につながるのだから…

この記事は有料記事です。

残り39文字(全文1224文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月