取材に行ったシリアで武装勢力に拘束され、3年4か月ぶりに解放されたジャーナリストの安田純平さん(44)について、インターネット上などで「拘束されたのは自己責任」と批判が起きています。こうした考え方に対し、海外で活躍するスポーツ選手らが反論しています。
広辞苑によると「自己責任」は「自分の判断がもたらした結果に対して自らが負う責任」という意味です。昔から使われていた言葉ではなく、広辞苑に掲載されたのも10年前の改訂からです。
よく使われるようになったのは14年前です。日本政府が危険なので入らないようにと「退避勧告」を出していたイラクで、ボランティア活動などの日本人3人が武装勢力に拘束されました。3人は解放されましたが、当時の小泉純一郎総理大臣が「自覚を持ってほしい」と述べたのを皮切りに、政治家が相次いで「危ないと言われているところにあえて行くのは、自分自身の責任の部分が多い」などと発言。「自己責任だ」という批判が広まりました。
国民の生命を守ることは、国の基本的な役割です。今回の安田さんの解放に日本政府がどのように関わったかは明らかにされていませんが、安田さんに対し、当時と同じように「自己責任」という批判が起きています。安田さんは2004年にも取材先のイラクで拘束されたことがあり「批判は仕方ない」と言う人もいます。
こうした意見に、7大陸最高峰を登頂したアルピニストの野口健さんは「使命感あふれるジャーナリストや報道カメラマンの存在は社会にとって極めて重要」とした上で「この度の出来事を一つの教訓として次につなげていかなければならないと思う。必要な事は感情的な批判ではなく冷静な分析」とツイッターで指摘しました。
アメリカ大リーグ・カブスのダルビッシュ有投手も反論しました。約80万人が死亡したとされる1994年のルワンダ大虐殺を例に出して「ルワンダで起きたことを勉強してみてください。誰も来ないとどうなるかということがよくわかります」と書き込みました。
ジャーナリストの津田大介さんはダルビッシュ投手らの発信について「海外では国際ニュースの量が多く、その中には戦場や紛争地を取り上げたものもある。ダルビッシュさんらは、安田さんのようなジャーナリストの社会における役割を知っているのだろう」と話しています。
考えよう、話し合おう
「自己責任」という言葉の使われ方やジャーナリストの役割について、みなさんはどう考えますか。友達や家族と話し合ってみよう。