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SUNDAY LIBRARY
平松 洋子・評『印刷・紙づくりを支えてきた34人の名工の肖像』雪朱里・著
2020/1/21 18:34(最終更新 1/21 18:34)
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声高に語られることのない 印刷をめぐる多彩な仕事ぶり
◆『印刷・紙づくりを支えてきた34人の名工の肖像』雪朱里・著 池田晶紀、川瀬一絵/写真(グラフィック社/税別2500円)
友人のひとりに、実家が印刷会社を営んでいる人がいる。小学生のころ、よく近所の活字鋳造工場にお使いに出されたそうだ。「組版に必要な活字が足りない、急ぐのに誰も現場を離れられないから、すぐ自転車で受け取ってこい、と」。近所には、活字鋳造や植字を生業(なりわい)にする職人さんの自宅兼仕事場があり、子どもなりに思っていた、と彼女が言う。「自分の親もふくめ、印刷業にかかわるひとは一様に佇(たたず)まいがひっそりとしていた」
本書は、印刷物や書物にたずさわる人々の仕事を伝える一冊。雑誌『デザインのひきだし』に、十一年にわたって連載された「名工の肖像」三十三回分と書き下ろし一回分を収録するもので、三十四人のポートレート、各仕事を紹介するカラー写真、ルポルタージュで構成される。
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