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話題のニュースを取り上げた寄稿やインタビュー記事、社説をもとに、読者のみなさんの意見・考えをお寄せください。(2022年3月で更新を終了しました)

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<社説>性犯罪の厳罰化 被害者支援の充実図れ

 性犯罪の罰則に関する法務省の有識者会議が報告書をまとめた。

 強姦(ごうかん)や強制わいせつの被害者が告訴しなくても容疑者を起訴できるようにし、刑罰も重くすべきだという意見が多数を占めた。法務省は法改正が必要か検討するが、人権や罪の重さからすれば理解できる流れだ。

 強姦罪と強制わいせつ罪が告訴を要する「親告罪」なのは、事件が公になって被害者に不利益が生じるおそれがあるという考え方からだ。

 だが、そもそも被害者に何ら非はない。社会の意識こそ変わらなければならない。同時に、被害者のプライバシー保護には十分配慮する必要がある。

 被害者が捜査機関に自ら告訴状を提出するのは精神的な負担が大きい。親族などから被害を受け、告訴をしないよう周囲に止められたり、加害者の弁護士から告訴を取り下げて示談に応じるよう持ちかけられたりすることは少なくない。

 欧米では告訴を必要としないのが主流だ。被害者の負担は軽くなり、埋もれていた被害が明るみに出ることも期待できる。

 有識者会議では強姦罪の法定刑が「懲役3年以上」で、「懲役5年以上」の強盗罪より軽いとして厳罰化を求める意見も多かった。被害者が一生心に傷を負うことを考えれば納得できる。

 被害者が子供の場合、大人よりも被害を訴えにくいため、公訴時効を撤廃・停止すべきかどうかも議論された。だが、「被害から長時間経過すると被害者の供述が唯一の証拠になりやすい」と懸念する意見が多かった。

 冤罪(えんざい)を防ぐ意味では理解できるが、子供は最も弱い立場にある。法的に不利益のないよう検討を重ねてほしい。

 被害者支援の現状には課題もある。警察官や検察官から事情を聴かれる際、配慮不足で再び傷つけられることがある。それを心配し、捜査機関への相談をためらう人は多い。被害者を保護する意識の徹底が求められる。

 内閣府は、被害者が支援を1カ所でまとめて受けられる「ワンストップ支援センター」を増やそうとしている。医師、看護師、弁護士、警察などが連携して対応すれば被害者の負担は大きく減る。しかし、病院の人手不足や費用負担を理由に協力が得られないことがしばしばある。国のいっそうの支援が必要だ。

 性犯罪は人の尊厳を著しく侵害する「魂の殺人」である。それでも名前と顔を出して被害者支援を訴えてきた女性たちもいる。その思いを受け止め、事件を減らすとともに支援の環境づくりを進めたい。

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