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武田 砂鉄・評『痴女の誕生』安田理央・著

男の願望と妄想が先かそれとも女の欲望が先か

◆『痴女の誕生』安田理央・著(太田出版/税抜き1600円)

 性癖は、あらゆる「癖」のなかでもっとも開示されないもの。誰かから興味本位に問われて嫌々開示したとしても、多少ならず世間体を意識したままだから、本当のところを知る人は限られる。アダルトメディアは「卵が先か、鶏が先か」ならぬ「性癖が先か、作品が先か」状態で、多様な性癖を知らせる作品が生み出され続けてきた。ひたすら足裏を映す作品があることを知ったが、元から「足裏フェチ」がいたのか、作品によって「癖」が開眼した人がいたのか、その割合を明確にするのは難しい。

 男たちの妄想が身勝手に具体化されてどこまでも肥大したのがアダルト業界だと片付けるだけでは全体像を見誤る。アダルトメディアの変遷を通史で問い直す安田理央『痴女の誕生』は、「男性の妄想の産物と思われがちな『痴女』像を作り出したのは、女性たちだった」と記す。

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