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三浦 天紗子・評『世界一ありふれた答え』谷川直子・著

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弱くなった心に刺さる“あたたかな拒絶”とは

◆『世界一ありふれた答え』谷川直子・著(河出書房新社/税抜き1400円)

 アメリカの心理学者ホームズらが発表した「社会的再適応評価尺度」によれば、人生の危機でもっともストレス度合いが大きいのは「配偶者の死」、次が「離婚」だ。「本人の大きなケガや病気」も43項目ある中で6番目とストレス度は高い。50年も前に作られた評価軸だが、いまも同様に、大切な存在を失い自分の役割をなくしたと感じたときに、人は心身にひどいダメージを受けることがある。

 本書のヒロインは、15年も支えてきた政治家の夫と離婚し、自分の存在価値を見失ってしまった40歳の積木まゆこ。うつ治療のために通っているクリニックのそばのコーヒーショップで、フォーカルジストニアという神経性の難病のために演奏できなくなってしまった、若く著名なピアニスト雨宮トキオと、人生のどん底で出会う。恋愛感情ではないが、似た苦しみを知る同士、互いの存在を心の中で命綱のように握りしめている。

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