待ち遠しい

/7 友人たち、ゆかり、近隣 作・柴崎友香 題字・画 赤井稚佳

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=画・赤井稚佳
=画・赤井稚佳

友人たち、ゆかり、近隣

 土曜日、春子は、直美と大学時代の友人と三人で京都へ行った。国立近代美術館と細見美術館を回り、学生の頃にときどき食べに行っていたスフレを何年ぶりかで食べ、おいしいおいしいと言い合って、南禅寺や蹴上(けあげ)のインクラインのほうまで歩いた。

 大学時代の友人の子供は彼女の実家に遊びに行っていて、直美の長男の明斗(あきと)は夫とその両親が海遊館に連れて行っている。今は京都に住んでいる大学時代の友人は、長女が小学校五年生で中学受験のための塾に送り迎えするのが忙しいし勉強も難しいと言っていて、直美はその話を熱心に聞いていた。子供のいない春子は、普段は触れる機会のない話なので、最近は子供も親も大変そうやな忙しそうやなと思ったり、塾で指導される面接テクニックの話に感心したり、自分も子供がいたら今の時代はやはり受験を考えるのやろうか、と想像してみたりした。

 友人二人が夕食の支度に帰らなければならないとのことで、もう一軒行きたかった喫茶店があったが別れて、春子と直美は京阪電車でいっしょに戻ってきたが、その途中で結局直美の夫から両親たちとどこかへ食べに行くと連絡があった。それやったら京都でごはんも食べてきたらよかったわ、と直美は言ったが、すでに最寄りの駅まで帰ってきていたので、春子の家に寄ることにした。

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