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激減した背番号10の出番…エジルとアーセナルに何が起こっているのか?

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[写真]=Getty Images
 メスト・エジルがアーセナルで出場機会を失っている。

 アーセナルで最も高い給料をもらっている天才司令塔だが、今シーズン、特に年明け以降は先発機会が激減している。2019年になってからアーセナルが戦った公式戦13試合のうち、スタメンだったのはプレミアのカーディフ戦(1月29日)、BATEボリソフとのヨーロッパリーグ(EL)ベスト32セカンドレグ(2月21日)、プレミアのボーンマス戦(2月27日)の3試合のみ。年末年始は膝の負傷もあったが、万全になったはずの最近も先発を飾る機会は少なく、5-1で勝ったボーンマス戦では1ゴール1アシストと輝きを見せたが、続くトッテナムとのノースロンドンダービーではアーロン・ラムジーが代わりに起用され、やはりベンチスタートとなった。

“アンタッチャブル”ではなく“1つのオプション”

 結論から言えば、ウナイ・エメリ監督の指揮下において、エジルはアーセン・ヴェンゲル時代のような「アンタッチャブル」ではなくなっている。チーム全体の連動したプレッシングを重要視するエメリは、エジルに合わせたチーム編成ではなく、自分のスタイルや戦術、または相手の戦い方に合わせて選手をチョイスする。その上で、4-3-3や3-4-3を採用する際のウイングにはヘンリク・ムヒタリアンやアレックス・イウォビら“動ける”選手が起用される傾向があり、アレクサンドル・ラカゼットとピエール・エメリク・オーバメヤンに2トップを組ませる4-3-1-2を採用する際も相手の中盤にプレッシングをかける意図が明確な試合が多く、その場合の「1=トップ下」にはラムジーが選ばれがちだ。特にノースロンドン・ダービーのような強度の高い試合ほど、その傾向は顕著に表れている。

 エメリはエジルについて「時には先発だし、時にはベンチスタート。良質なローテーションを回していきたい」と話した。エレガントだが時に「気まぐれ」とも見られてしまうように、前線からのプレスバックやフォアチェックが不得手で、非ポゼッション時の貢献度が低いエジルは特別な存在ではなく、あくまでもエメリが持つ攻撃カードの1枚、つまり1つのオプションでしかない。

 同時にエメリは、「もっと一貫性を持ってトレーニングし、確実に試合でプレーできるなら、もっと我々の助けになるだろう」とも話している。現状を好ましく思っていないはずのエジルは、モチベーションを落とし、集中力を欠いているのだろうか? それを心配するのは元恩師のヴェンゲルだ。エジルはヴェンゲル退任直前の18年2月にアーセナルと2021年まで契約を延長し、クラブ史上最高額の週給35万ポンド(約5460万円)を受け取る選手になった。だが、ヴェンゲルは「普通は5年契約したら5年はいい選手なのだが……」と前置きした上で「必ずしもその選手がちゃんと練習し、ベストなプレーをするとは限らない」と話し、大型契約がエジルを“安全地帯”に置いてしまったのではないかと危惧している。

SNSに込められたメッセージとは?

 もしその気配があるならば、アーセナルは次の夏でエジルの売却に動くだろう。だが、当のエジルは自身のSNSでこう発言し、アーセナルへの愛と情熱を改めて表明している。

「フットボールクラブをサポートし始めるのはトロフィー、選手、歴史が理由ではない。自分自身がいるべき場所をそこに見つけたからだ。#DennisBergkamp」

 ハッシュタグにあるように、これはアーセナルのレジェンドであるデニス・ベルカンプがかつて言ったセリフの引用だ。「アーセナルを愛しているし、まだアーセナルで戦いたい」。そんなメッセージを彼は発したのだ。

 ただし、このメッセージはエメリへの皮肉、当てつけと受け止められかねないことも理解しておかなければいけない。投稿があったタイミングは、アーセナルがBATEボリソフとのELベスト32ファーストレグ(エジルはメンバー外)に敗れた直後だった。エジル(または彼のマネジメントチーム)は純粋にアーセナル愛を表現してファンを安心させたかっただけかもしれないが、熱心なエジル信者や、まだエジルを信じているグーナーの中にはこれをきっかけとして反エメリに傾く者もいただろう。これがもしエジル側の“ささやかな抵抗”だったとすれば、「エジル対エメリ」の構図はさらに議論を呼ぶことになりそうだ。

 いずれにせよ、エジルとアーセナルの関係はいま、非常に繊細かつ複雑な状況になっている。識者やファンの中でも、エメリの聖域なき改革とチームのモダン化を支持している層もあれば、シンプル化した一方でやや単調になった攻撃に物足りなさを覚えて「エジルの創造力をもっと生かすべき」と考える層もいて、意見は割れている。

 アーセナルは、エメリは、そしてエジルは、この議論にどんな答えを出すのだろうか。それは移籍かもしれないし、指揮官が天才の生きる道を見出すことかもしれないし、はたまたエジル自身が“変わる”ことかもしれない。とはいえ、今シーズンのうちはまだまだ、エジルを取り巻く状況からは目が離せない。

文=寺沢薫

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