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熱狂ゲノム

人間をはじめ全ての生物が持つ遺伝情報「ゲノム」。最先端の研究機関が研究を独占する領域だったが、新技術の登場で医療や食品のほか趣味の世界にまで爆発的に広がろうとしている。この熱狂ぶりはどこに向かい、何をもたらすのか。第1部は自然環境やペットなど身近に迫るゲノム技術の現状を追う。

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熱狂ゲノム

第1部 身近に迫る技術/3 資源減、食品編集進む

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 ガラス製の皿の上に、直径約1ミリのトラフグの受精卵が60個ほど整然と並ぶ。京都大の木下政人助教(56)は顕微鏡をのぞきながら受精卵一つずつに細い針を差し込み、ゲノム編集技術の一つ「クリスパー・キャス9」に使う成分を注入した。受精卵を遺伝子改変し、肉付きが良くて成長の早いトラフグを作るのが狙いだ。

 高松市内にある研究所のいけすには、ゲノム編集されたトラフグが元気よく泳ぐ。「養殖は餌で味が変わるが、今のところ食べても普通のフグと変わらない」。木下助教は胸を張る。

 欧米の研究者が簡単にゲノム編集できる「クリスパー・キャス9」を2012年に発表して以降、この手法を使い農畜産物を品種改良する研究が世界で広がった。木下助教らがターゲットにするのは、トラフグの筋肉の成長と食欲を抑制する2種類の遺伝子だ。ゲノム編集でこれらの遺伝子を壊し機能を失わせたところ、トラフグの肉量は約1・3倍に増加。餌をよく食べるため成長が早く、通常2年かかる出荷までの期間をかなり短縮できそ…

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