東京電力が新潟県の柏崎刈羽原発1~5号機の一部の廃炉を検討すると初めて表明した。
ただし、廃炉は東電が目指す6、7号機再稼働が前提だ。さらに、原発は温室効果ガスを出さない電源だとの理由で、1~5号機を代替する再生可能エネルギー導入の見通しが立つことも条件にしている。
地元の新潟県柏崎市長が6、7号機再稼働の是非を判断する前提として、廃炉計画を求めていた。東電はそれに応えたとするが、幾重にも条件を重ねたあいまいな「廃炉」表明は、再稼働手続きを進めたいがための方便にしか見えない。
7基で構成する同原発は世界最大級の出力規模を持ち、福島第1原発事故前は東電の経営を支える大黒柱だった。半面、集中立地に伴う危険性が指摘されてきた。
2007年の新潟県中越沖地震で被災した後、全基が運転停止しており、再稼働への地元の不安は強い。柏崎市長の廃炉要請の背景には、そんな住民の思いも反映されている。
東電は廃炉にしたくないのが本音だろう。再稼働すれば1基当たり年間600億~1300億円の収支改善効果があると見込むからだ。巨額の福島事故対応負担を迫られている東電は、国と作った再建計画で柏崎刈羽の全基再稼働を想定してきた。
にもかかわらず、今回、廃炉の検討を表明したのは、地元の同意を得られないままでは、原子力規制委員会の審査を通過した6、7号機の再稼働さえ進まないと焦燥感を強めたためだろう。
東電は原発が動かせなければ、福島事故対応のための収益確保も難しくなりかねないとも主張する。だが、柏崎刈羽の再稼働は、福島事故とは別問題で、あくまで新潟県も含む地元の同意が大前提だ。
6、7号機の再稼働をめぐっては、安全対策費が当初の1・7倍の1兆1690億円に膨らんでいる。再稼働による収支改善効果も従来より大幅に縮小している可能性がある。
新潟県も6、7号機再稼働に慎重姿勢を続ける中、東電が期待する21年度までの実現は困難なのが実情だ。東電は今年度内に国と再建計画の見直しを協議する見通しだ。原発をめぐる環境が一層厳しくなった現実を直視した内容に改めるべきだ。