「金正恩氏のベンツ」密輸疑惑 日本企業ははめられたのか
毎日新聞
2019/9/18 18:20(最終更新 10/16 18:36)
有料記事
927文字
- ポスト
- みんなのポストを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
安全保障問題専門家(元・国連安保理北朝鮮制裁専門家パネル委員)古川勝久さん
「こんにちは! 徐社長!」
2018年8月2日、大阪市西区にある美濃物流株式会社の徐正健社長は、中国・大連市所在の物流会社の中国人女性(A氏)からソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて初めて連絡を受けた。日本から酵素飲料を中国に輸入したいので、日本側で輸出代行業務をお願いしたいとの話だった。知人の紹介である。
「早く進めましょう」「今後、御社の取引量は増えますよ」
当時のSNSの通信記録を見ると、A氏は徐社長に取引を積極的に持ち掛けていたことがわかる。だが8月14日になると突然、話の流れが変わった。
「大連から日本向けの貨物輸送業務をお願いしたい」
コンテナでメルセデス・ベンツ2台を大連港から大阪港まで送るので、それを他の船に積み替えて中国に再度戻してほしいという。大連港では車両の積み替えが規制されており、一度、中国から第三国へ車両を出す必要がでてきたとのこと。
徐社長にはベンツの取り扱い経験はない。大したもうけにもならない。SNSの通信記録には、消極的な徐社長がしぶしぶ顧客の要望に応じてゆく様が見て取れる。A氏が勝手に中国税関や船舶会社に提出していた書類では、徐社長は知りもしないイタリア企業からベンツ2台を購入したことにされていた。
1年後、徐社長はこの判断を大いに悔やむこととな…
この記事は有料記事です。
残り331文字(全文927文字)