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連合と経団連の労使トップが会談し、2020年の春闘が始まった。大企業で昨年まで6年続いた2%超の賃上げの流れが維持され、非正規や中小企業と大企業の労働者との格差是正が進むかが焦点だ。
労使とも「賃上げは重要」というが、手法では立場の違いが鮮明だ。
連合は基本給を引き上げるベースアップ(ベア)で2%程度の賃上げを求めた上で、「格差是正」に重点を置いている。
これに対して、経団連は「賃上げのモメンタム(勢い)は大事」としつつ、一律の賃上げには消極的だ。
近年、大企業の賃上げ交渉は業界横並びが崩れ、個別の労使が業績の違いなどを踏まえて行うのが主流だ。このため、連合や産業別労組は非正規などに賃上げの裾野を広げることで存在感を示そうとしている。
自動車総連などは高卒初任給に当たる「企業内最低賃金」の労使協定化を統一要求に掲げた。非正規や下請けも含む企業グループや産業界全体での賃金底上げを訴える。
連合は中小の賃上げ目標を1万500円以上とした。賃上げ率アップでは、もともと開きがある大手との賃金水準の差が埋まらないからだ。
一方、経団連はデジタル化や国際競争への対応を理由に、成果に基づくベアの配分など米国流の成果主義への転換を主張している。
だが、非正規や中小の労働者は、「戦後最長」とされる景気回復の恩恵をまったく実感できていない。
労働者の7割は中小企業で働く。大企業のサプライチェーン(供給網)を支えるだけでなく、地域経済の重要な担い手だ。待遇改善が進まないと、日本全体にマイナスとなる。
全体の4割近くに達する非正規の待遇改善も待ったなしだ。国は就職氷河期世代の非正規労働者の支援を始めたが、大企業の積極的な関与なしには効果がない。
財務省の統計によると、企業の手元にある現金などの内部留保は18年度に463兆円と、7年連続で過去最高となった。一方、収益に対する人件費の割合を示す労働分配率は四十数年ぶりの低水準だ。
労働者の待遇格差を放置しては、持続的な景気回復も国際競争力向上も望めない。労使は協調して、この構造問題の解決に取り組むべきだ。