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(慶應義塾大学出版会・2970円)
日本中枢での実務と理論の結合
テロリズムという難しい問題について、国際基準の議論をわかりやすく表現した優れた作品だ。小林良樹氏(明治大学公共政策大学院特任教授)は、米国の研究者デイビッド・ラポポート氏が19世紀以降のテロリズムに「4つの波」があると指摘したことにヒントを得て日本のテロ情勢分析について考察する。「4つの波」とは具体的に「無政府主義者の波」(1880年代~1920年代)「反植民地主義の波」(1920年代~60年代)「新左翼の波」(1960年代~90年代)「宗教の波」(1980年代~現在)を指す。<日本におけるテロ情勢は、「4つの波」が示す世界的な趨勢(すうせい)に一定程度合致しています。特に「新左翼の波」の時代は最も合致しています。/同時に、「4つの波」と日本の情勢が必ずしも合致しない部分もあります。こうした部分からは、「世界の趨勢の中で日本に特有な点は何なのか」という点が浮き彫りにされます。/このように、ラポポートの「4つの波」の枠組みは、日本のテロ情勢を理解する上でも、一定の有用性があると考えられます>というのが小林氏の評価だ。説得力がある。小林氏はラポポート氏の理論を日本に土着化させることを考えている。
小林氏は、警察庁国際組織犯罪対策官、高知県警本部長などを歴任した元警察官僚だ。また、内閣官房審議官(内閣情報調査室・内閣情報分析官)を務めたこともあり、日本国家の中枢でテロ対策の実務に従事していた。実務家の立場からすると警察のテロ対策に国会が関与してくるのは面倒だ。しかし、実務家の狭い視野にとらわれず、民主主義体制におけるテロ対策のあり方を真剣に考えている。<現在の衆参両院の情報監視審査会を発展…
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