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(角川選書・1870円)
両立する定型と自由
和歌は7世紀前半までに形態が整えられ、少なくとも江戸時代までは生活に根づき、その命脈も保たれていた文化だった。では、なぜ和歌は続いたのか。なぜ人々は和歌という31文字の定型を手放さなかったのか。
この大きな問いに挑んだ著者は、控えめにいってこの道の第一人者、客観的にいえば大家だ。だがこの大家、瑞々(みずみず)しい感性を武器に、和歌の力を軽快な筆致で解明しにかかるので、読みだしたら止まらない。31文字で勝負がつく世界を伴走してきた著者に、330頁(ページ)超の本を書かせたらどうなるか。面白いに決まっている。
冒頭で「縄目なしには自由の恩恵はわかりがたいように、定型という枷(かせ)が僕に言語の自由をもたらした」との寺山修司の言葉が引かれる。和歌に必須の様式である「定型」が、意外にも制約ではなく「自由」と親和性の高いことを、寺山を例として読者の脳裏に鮮やかに刻む。では、定型と自由という組み合わせは、なぜ和歌で無理なく両立するのだろうか。
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