すし詰めの人混みに仰天 記者が武漢で見た中国経済の光と影

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大勢の買い物客でにぎわう江漢路=中国湖北省武漢で2021年4月8日午後6時32分、小倉祥徳撮影
大勢の買い物客でにぎわう江漢路=中国湖北省武漢で2021年4月8日午後6時32分、小倉祥徳撮影

 この回復は本物なのだろうか。16日に発表された2021年1~3月期の国内総生産(GDP)が、2ケタ成長を記録した中国経済のことだ。新型コロナウイルス禍が直撃してマイナス成長となった前年同期の反動もあるだけに、評価は簡単ではない。現場で実態を探るため、世界で初めて集団感染が確認された地である湖北省武漢市内を記者は歩いた。そこで見えてきたのは、中国経済の「光と影」だった。【武漢で小倉祥徳/中国総局】

肩もぶつかる人の波、博覧会に10万人

 4月8日の午後6時半。新型コロナに伴う「都市封鎖」措置が解除されてちょうど1年が経過したこの日、記者は武漢市中心部の漢口地区にあるショッピング街「江漢路歩行街」に足を踏み入れた。地下鉄駅を出たとたんに、雑踏特有のざわめきが耳に飛び込んでくる。国内外のアパレル店や飲食店などが建ち並ぶ1キロあまりの目抜き通りは、平日にもかかわらず親子連れや若者らであふれかえっていた。

 道幅は15メートルほどもあるのに、すれ違う人と肩がぶつかりそうだ。テークアウト型のミルクティー店や菓子店などの前では数十人単位の行列ができている。日本式焼き肉店の店員に聞くと、入店まで1時間待ちだという。

 記者は北京に住み、これまでに沿海部の大都市・上海や広州も訪ねたが、これだけの人混みはまれだ。8時ごろになると一帯の人出はさらに増した。イベント広場で、地元の自動車大手「東風汽車集団」の新車披露会が始まったのだ。中国国営中央テレビの人気アナウンサーが司会役として登場すると、「わあ」と歓声が上がり、辺りは満員電車のように人が押し合う騒ぎとなった。

 上海や広州などに比べると、さすがにマスクをつける人は多い印象だが、「密集」を気にしている様子は全くない。それもそのはず、中国政府によると、武漢では昨年6月以降、市中感染者は出ていない。「夏ごろから人通りは以前ともう変わらないよ」。女性服を売っていた露店の中年女性はそう話した。

 19年12月に最初の感染患者が公式に確認された武漢市は、20年1月23日から4月7日夜まで、市の出入りを禁じる都市封鎖の措置を取った。市民の外出は厳しく制限され、生産活動もストップ。累計感染者は約5万人に達し、目抜き通りはゴーストタウンと化した。武漢市統計局によると、武漢の工業生産は20年3月に前年同月比53・7%減まで落ち込んだ。だが、解除後は急ピッチで持ち直し、同12月には12・1%増まで回復した。前述の江漢路歩行街は、「武漢復活の象徴」として、内外メディアで報じられるスポットとなっている。

 うわさ以上の活況に圧倒された記者だったが、では屋外に比べてより「密」になりやすい屋内の大型イベントはどうな…

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