「大丈夫か朝日」デジタル版編集長に社外の42歳を招いた覚悟とは

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インタビューに答える朝日新聞デジタルの伊藤大地編集長=東京都中央区で2021年4月16日、北山夏帆撮影
インタビューに答える朝日新聞デジタルの伊藤大地編集長=東京都中央区で2021年4月16日、北山夏帆撮影

 「大丈夫か朝日」――。この春、メディア業界である人事が話題になった。ウェブメディア出身の伊藤大地さん(42)が朝日新聞デジタルの編集長に就いたのだ。私たちの働く新聞業界は、縦割り組織に年功序列など硬直的な体質が根深く、社外人材の活用は共通の課題である。朝日の人事は異例だ。伊藤さんはどのような思いから引き受けたのか。東京・築地の朝日新聞本社で本人を直撃した。【松倉佑輔/デジタル報道センター】

ネットメディアで活躍

 「どうも、初めまして」。受付に現れた伊藤さんはあごひげを蓄え服装もカジュアル。およそ新聞社の編集部門の幹部には見えない。

 伊藤さんは4月1日付でニュースサイト「朝日新聞デジタル」の責任者である編集長に就任した。同日、ツイッターへの投稿で「新聞経験のない私に、思い切ったことするな 大丈夫か朝日」と記し「目的はひとつ、良質な報道環境を残すため」と意気込みを示していた。

 1978年生まれ。就職氷河期だった2001年にデジタル関連の情報をネットなどで発信するインプレスに入社した。携帯電話やインターネットなど通信業界の専門記者として取材経験を積んだ。

 転機は13年だった。ネットメディアの「ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン(ハフポスト日本版)」の創刊に参画。副編集長を経て15年には「バズフィードジャパン」に転身した。19年にはエンターテインメント情報などを統括する同社の「オリジナル」編集長となった。

 「新聞社などの大手メディアと圧倒的な戦力差がある中で、どこだったら勝てるだろうと考えてきました。大手がやらない問題を扱う。振り返ってみると常にオルタナティブな戦い、ゲリラ戦をしてきましたね」と振り返る。

 地道な努力が結実したのは、バズフィード時代に担当デスクとして報じたDeNAの医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」をめぐる問題だ。真偽の怪しい情報が大量に掲載されていることを記者たちとチームを組んで調査。記事は話題を呼び、サイトは閉鎖に追い込まれた。

 「新聞社的なやり方だと、社会部か経済部かという持ち場の問題がありますよね。あと誰も隠していないサイトの問題点を指摘しても特ダネだと評価されないと思います。でもネットメディアの僕らから見ると純粋におかしい。問題発見の部分から大手と違うところでやってきました」

 その伊藤さんに新聞社やテレビ局などのマスコミはどう見えていたのか。

 「はじめから新聞社にいたら分からない特権はたくさんあると思います。首相官邸や省庁、プロ野球などのスポーツ取材。どこでもパス一つで入れる。名刺一枚でどこにでも行けてしまう」。ネットメディアでいくら実績を積み重ねても壁は厚かったという。

新聞社に転身した理由

 なぜ、「ゲリラ戦」を続けてきた伊藤さんが新聞社に転身したのか。それは…

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