対立が深まるのか、協調へ向かうのか。英国で開かれた日米欧の主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、岐路に立つ世界の現状を浮き彫りにした。
首脳宣言は、手厚い途上国支援を打ち出した。新型コロナウイルスのワクチン10億回分を供与し、年間1000億ドルを目標に資金を拠出して気候変動対策を後押しする。地球規模の課題に責任を果たす意思表示として評価できよう。
途上国支援と並んで大きなテーマとなったのが中国である。宣言は人権状況や経済慣行の是正を促し、緊張が高まる台湾海峡の安定の重要性を強調した。中国を強くけん制する内容だ。
しかし、長時間の議論では、G7内の温度差も鮮明になった。
中国を強い表現で非難するよう主張した米国に英国とカナダが同調し、ドイツ、フランス、イタリアが慎重な姿勢で足並みをそろえた。日本は「深い懸念」を表明し、G7の連携を促した。
耳を傾けたいのは、メルケル独首相の主張だ。国際ルールの重要性を指摘する一方、協調にも配慮したアプローチが必要だと訴えたという。
メルケル氏の念頭にあるのは米中「新冷戦」への懸念だろう。「世界を再び二つの陣営に分けるべきではない」というのが持論だ。
冷戦時代にドイツは米ソ対立の最前線に置かれた。緊張にさらされ続けた国のリーダーならではの調和を求める世界観だ。
サミットでは、途上国のインフラ整備を支援する枠組みの創設で合意した。中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗するのが狙いだ。
主導したバイデン米大統領はかねて「米国に賭けない手はない」と述べている。だが、中国と競うあまり囲い込みに突き進めば、途上国は踏み絵を踏まされ、国際協調を阻むことになりかねない。
G7が団結して中国排除に動けば世界の分断を招く。結束が緩めば中国の影響力の増大を許す。問われるのは、安定につながるバランスをどうとるかだ。
日本も人ごとではない。「新冷戦」になれば米中対立の最前線に立たされる。それを回避する外交努力こそが、菅義偉政権に求められるのではないか。