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パリの燦歩道

パリ・オリンピック・パラリンピックを目指すアスリートが燦々(さんさん)と輝くために歩む道を描きます。

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18歳新星が見つけた新たな夢 パラ陸上・中川もえ

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2021年のアジアユースパラで100メートル、200メートル(上肢障害T47)の2冠を達成し笑顔を見せる中川もえ選手=日本パラ陸上競技連盟提供
2021年のアジアユースパラで100メートル、200メートル(上肢障害T47)の2冠を達成し笑顔を見せる中川もえ選手=日本パラ陸上競技連盟提供

 自分が、自分でいられる時。パラ陸上短距離界に新星のごとく現れた宮崎市の中川もえ選手(18)=西池AC=にとって、それは走っている最中だ。自らの居場所を追求するように、100分の1秒でも速く。その思いが、人生をも変えてきた。

幻の日本新記録

 昨年12月3日、バーレーンであったアジアユースパラ競技大会200メートル(上肢障害T47)決勝。スタートで勢いに乗ると、大きなストライドと力強い走りでグングンと加速し、後半はほぼ独走状態で走り抜けた。

 速報表示のない会場で、手に握りしめたスマートフォンにやがて飛び込んできた自身の記録は26秒80。2016年リオデジャネイロ・パラリンピック400メートル銅メダリストの辻沙絵選手(日体大教、27歳)が17年に出した日本記録より0・04秒速かった。「日本記録を狙いたいと思って改善を重ねて挑んだ大会だったんです。だからこそうれしかった」。しかし、なかなか風速が出ない。後に運営側の失態で風速を計測していなかったことが分かり、「幻の日本記録」に。言葉が出なかった。

 それでも翌日の100メートル決勝でも辻選手の日本記録に0・2秒と迫る12秒89で「13秒台」の壁を突破し2冠を達成。トップスプリンターの仲間入りを果たした。

 生まれた時から右腕の肘から先がない。他の赤ちゃんと同じようにハイハイをし、幼少期から水泳やクラシックバレエ、ピアノを習った。しかし、…

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