今知りたい国、トルコとは？

　日本（にっぽん）から見（み）て反対側（はんたいがわ）、アジアの西端（せいたん）にあるトルコ。最近（さいきん）はロシア機撃墜事件（きげきついじけん）など、過激派組織（かげきはそしき）「イスラム国（こく）」（ＩＳ）やシリア内戦（ないせん）のニュースに関連（かんれん）してよく聞（き）きます。どんな国（くに）なのでしょう。【文（ぶん）・大和田香織（おおわだかおり）／え・渡辺正義（わたなべまさよし）】

ポイント

＜１＞イスラム教徒多（きょうとおお）いが政教分離（せいきょうぶんり）

＜２＞さまざまな民族（みんぞく）が行（い）き来（き）

＜３＞初代大統領（しょだいだいとうりょう）ケマル・アタチュルク

＜４＞ヨーロッパとの関係（かんけい）は？

ＮＡＴＯ（ナトー）の加盟国（かめいこく）

　トルコ共和国（きょうわこく）は、黒海（こっかい）と地中海（ちちゅうかい）の間（あいだ）にあるアナトリア半島（はんとう）と、海峡（かいきょう）を挟（はさ）んでヨーロッパ側（がわ）にあるバルカン半島（はんとう）の一部（いちぶ）にまたがる地域（ちいき）です。最大（さいだい）の都市（とし）はヨーロッパ側（がわ）のイスタンブールです。人口（じんこう）の多（おお）くはイスラム教徒（きょうと）ですが、政教分離政策（せいきょうぶんりせいさく）をとり、アラビア文字（もじ）でなくアルファベットを使（つか）うなど他（ほか）のイスラム諸国（しょこく）とかなり違（ちが）います。

　南（みなみ）に勢力（せいりょく）を広（ひろ）げたいロシアとは長（なが）く敵対（てきたい）してきたいきさつもあり、第二次世界大戦後（だいにじせかいたいせんご）の冷戦時代（れいせんじだい）、西側諸国（にしがわしょこく）がかつてのソビエト連邦（れんぽう）（今（いま）のロシアとその周辺国（しゅうへんこく））など社会主義（しゃかいしゅぎ）の国（くに）に対抗（たいこう）するため作（つく）ったＮＡＴＯ（北大西洋条約機構（きたたいせいようじょうやくきこう））に加盟（かめい）。ＥＵ（ヨーロッパ＜欧州（おうしゅう）＞連合（れんごう））加盟（かめい）も希望（きぼう）しています。

遊牧民（ゆうぼくみん）の国家（こっか）やローマ帝国（ていこく）の支配（しはい）も

　「トルコ」の語源（ごげん）は突厥（とっけつ）、６世紀（せいき）、ユーラシア大陸（たいりく）の中央（ちゅうおう）、今（いま）のモンゴルのあたりにできた遊牧民（ゆうぼくみん）の国家（こっか）と言（い）われます。アナトリア半島（はんとう）はそれ以前（いぜん）から、ヒッタイト王国（おうこく）、ギリシャ、マケドニア、ローマ帝国（ていこく）などが支配（しはい）してきました。それを示（しめ）す世界遺産（せかいいさん）が数多（かずおお）くあります。また長（なが）い間（あいだ）に東西南北（とうざいなんぼく）のさまざまな民族（みんぞく）が行（い）き来（き）した歴史（れきし）があり、今（いま）のトルコ人（じん）も、日本人（にっぽんじん）のような顔（かお）から西洋風（せいようふう）の顔（かお）まで目（め）や髪（かみ）の色（いろ）もさまざま。今（いま）もアラブ、ギリシャ、アルメニア系（けい）など多（おお）くの民族（みんぞく）がいます。イラクにも多（おお）いクルド人（じん）は国内最大（こくないさいだい）の少数民族（しょうすうみんぞく）です。

オスマン帝国（ていこく）から共和国（きょうわこく）へ

　１９２３年（ねん）にトルコ共和国（きょうわこく）が建国（けんこく）される前（まえ）は、１２９９年（ねん）から続（つづ）くオスマン帝国（ていこく）の時代（じだい）でした。一時（いちじ）はヨーロッパ、西（にし）アジア、北（きた）アフリカまで広大（こうだい）な地域（ちいき）を征服（せいふく）しましたが、第一次世界大戦（だいいちじせかいたいせん）で敗戦（はいせん）、イギリスやギリシャなどに国土（こくど）を分割（ぶんかつ）される中（なか）で現（あらわ）れたのが、ムスタファ・ケマルです。軍人（ぐんじん）でしたが、国民（こくみん）の間（あいだ）で戦勝国（せんしょうこく）への抵抗運動（ていこううんどう）が起（お）こる中（なか）、王（おう）（スルタン）に逆（さか）らって運動（うんどう）をまとめ、共和国（きょうわこく）の初代大統領（しょだいだいとうりょう）になりました。「トルコの父（ちち）」を意味（いみ）する「ケマル・アタチュルク」と呼（よ）ばれ、政教分離（せいきょうぶんり）や暦（こよみ）などを西洋式（せいようしき）に改（あらた）める「世俗化（せぞくか）」を進（すす）めました。

シリア内戦（ないせん）で重要（じゅうよう）な拠点（きょてん）に

　今（いま）のエルドアン大統領（だいとうりょう）の政権（せいけん）は、イスラム系（けい）、大統領権限（だいとうりょうけんげん）を強（つよ）める憲法改正（けんぽうかいせい）を目指（めざ）し、メディアの報道（ほうどう）を規制（きせい）したり、クルド語（ご）の教育（きょういく）を禁（きん）ずるなど強権的（きょうけんてき）な政策（せいさく）で知（し）られます。ヨーロッパ諸国（しょこく）は、トルコのＥＵ加盟（かめい）に慎重（しんちょう）な姿勢（しせい）をとってきましたが、シリア難民（なんみん）の流入規制（りゅうにゅうきせい）や過激派組織（かげきはそしき）ＩＳへの対応（たいおう）で、トルコが重要（じゅうよう）な拠点（きょてん）になっており、先月（せんげつ）になってトルコのＥＵ加盟交渉（かめいこうしょう）が再開（さいかい）しました。

　■エルトゥールル号事件（ごうじけん）

　オスマン帝国末期（ていこくまっき）のスルタン、アブデュルハミド２世（せい）は、明治維新後（めいじいしんご）に近代化（きんだいか）を進（すす）める日本（にっぽん）に強（つよ）い関心（かんしん）を持（も）っていたといいます。１８８９年（ねん）、軍艦（ぐんかん）エルトゥールル号（ごう）が派遣（はけん）され、翌年（よくとし）、使節団（しせつだん）が明治天皇（めいじてんのう）にスルタンの親書（しんしょ）を送（おく）りました。帰（かえ）り道（みち）、エルトゥールル号（ごう）は暴風雨（ぼうふうう）のため今（いま）の和歌山県沖（わかやまけんおき）で座礁（ざしょう）、多（おお）くの死者（ししゃ）・負傷者（ふしょうしゃ）を出（だ）します。漁村（ぎょそん）の住民（じゅうみん）たちが乗組員（のりくみいん）を救助（きゅうじょ）し、日本中（にほんじゅう）から遺族（いぞく）への寄付金（きふきん）も集（あつ）まりました。最近公開（さいきんこうかい）された映画（えいが）「海難（かいなん）１８９０」のモデルになりました。